溶液NMR法により可視化された高エネルギー状態のタンパク質立体構造
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- 徳永 裕二
- 東京大学大学院薬学系研究科
抄録
複雑に折りたたまれたタンパク質の立体構造情報は,その機能を理解するために本質的に重要であると同時に,合理的な分子設計に基づく医薬品開発においても重視されている.今日,X線結晶構造解析,核磁気共鳴(NMR)法,クライオ電子顕微鏡,および計算科学的手法の発達に伴い,タンパク質構造決定は飛躍的に進歩した.一方で,酵素反応の時定数や分子結合の親和性などの特性を,静止した立体構造のみから定量的に予測することは難しい.ここには,タンパク質が動的平衡の中で形成する自由エネルギーの高い状態の関与が示唆されている. しかし,10%に満たない低存在比の高エネルギー状態の構造解析は技術的に高難度であり,報告例は限られていた.本稿では,溶液NMR法を用いて高エネルギー状態のタンパク質の立体構造解析に挑戦したStillerらの報告を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Boehr D. D. et al., Science, 313, 1638–1642(2006).<br>2) Korzhnev D. M. et al., Science, 329, 1312-1316(2010).<br>3) Stiller J. B. et al., Nature, 603, 528-535(2022).<br>4) Hass M. A. S. et al., J. Biomol. NMR, 61, 123–136(2015).
収録刊行物
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- ファルマシア
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ファルマシア 59 (3), 241-241, 2023
公益社団法人 日本薬学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390576745204724352
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- ISSN
- 21897026
- 00148601
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可