インスリン由来アミロイドーシス(インスリンボール)とインスリン療法の皮膚合併症

  • 永瀬 晃正
    則武内科クリニック 東京医科大学 茨城医療センター 代謝内分泌内科
  • 岩屋 啓一
    佐々木研究所付属杏雲堂病院 病理診断科
  • 座古 保
    愛媛大学 理工学研究科
  • 菊地 実
    日本医療大学 保健医療学部 診療放射線学科
  • 桂 善也
    東京医科大学 茨城医療センター 代謝内分泌内科

書誌事項

タイトル別名
  • Insulin-derived amyloidosis (insulin ball) and skin-related complications of insulin therapy

抄録

<p>インスリン療法の皮膚合併症は,インスリン療法を阻害する要因として以前から問題となってきた.従来の皮膚合併症の中で,リポアトロフィーやインスリンアレルギーはインスリン製剤の発展とともに著明に減少したが,リポハイパートロフィーはいまだにインスリン治療患者での頻度が高い.最近,インスリン由来アミロイドーシスあるいはインスリンボールと呼ばれる皮膚合併症の報告が増えてきた.インスリン由来アミロイドーシスは,注射されたインスリンがアミロイドタンパク質となり注射部位に沈着するものであり,腫瘤形成性と非形成性の病変があり,腫瘤形成性の病変をインスリンボールと呼んでいる.インスリン由来アミロイドーシスは血糖コントロール悪化やインスリン注射量増加を生じるが,その原因はインスリン吸収を低下させることである.リポハイパートロフィーもインスリン吸収を低下させるが,インスリン由来アミロイドーシスの方がインスリン吸収の低下が大きく,臨床的影響も大きい.このため両者を鑑別診断することが重要であるが,時に鑑別が困難で,画像検査を要することがある.また通常診療ではインスリン由来アミロイドーシスの診断が難しいことが多く,そのため病態や有病率が完全には明らかにされていない.最近,インスリン由来アミロイドーシスが毒性を持つ場合があることが報告され,ミノサイクリン使用との関連が示唆された.インスリン由来アミロイドーシスおよびリポハイパートロフィーの対処法はその部位を避けてインスリン注射をすることであるが,その際にインスリン注射量を減量することが必要である.インスリン由来アミロイドーシスもリポハイパートロフィーも予防が重要であり,そのためにはインスリン注射部位の確認や適切なインスリン注射手技の指導が継続的に必要であり,多職種連携が極めて重要である.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 158 (2), 173-177, 2023

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (16)*注記

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