1920年代前半ロシアにおける「科学的労働組織」をめぐる論争と教育政策

書誌事項

タイトル別名
  • Scientific Labor Organization (HOT) for the Educational Policies in Soviet Russia in the First Half of 1920s
  • 1920ネンダイ ゼンハン ロシア ニ オケル 「 カガクテキ ロウドウ ソシキ 」 オ メグル ロンソウ ト キョウイク セイサク

この論文をさがす

抄録

ソビエト政権は,様々な不平等の根源が資本主義的な搾取-被搾取の関係性にあるとし,「資本主義よりもいっそう高度な社会的経済制度をつくりだすという根本的任務」を遂行する観点から,テーラー・システムを発展させたマネジメントの概念である科学的労働組織の研究を進めた。1920 年代前半においては,特に,П.М.ケルジェンツェフとА.К.ガステフを中心としたНОТ論争が生じたが,両者ともに,労働者の身体に直接的に働きかけることにより,社会主義社会の形成者に相応しい人格を備えた全面的に発達した人間を育成する手立てとして科学的労働組織をとらえていた。<br>  ただし,こうした科学的労働組織をめぐる論争は,ソビエト政権による「根本的任務」 が,個別政策分野の課題を検討・設定する際の上位概念と位置づけられたことから,教育政策に際しても,全面的に発達した人間の育成や労働と教育の結合といった本質的な諸課題が,「資本主義よりもいっそう高度な社会的経済制度をつくりだす」ための政策の枠組みで分析・解釈されることになり,全面的に発達した人間の育成というよりも,労働生産性を高める現実的な対処に注意が向けられる可能性を孕むことになった。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ