規模階層及びコスト階層を考慮した個別稲作経営の生産・収益構造の分析

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タイトル別名
  • Analysis of the Production and Profit Structure of Rice Farms Based on the Strata of Farm Scale and Production Cost
  • キボ カイソウ オヨビ コスト カイソウ オ コウリョ シタ コベツ イナサク ケイエイ ノ セイサン ・ シュウエキ コウゾウ ノ ブンセキ

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抄録

近年の米生産構造は作付面積の拡大及び組織経営の進展に特徴づけられる。一方で,先行研究からは経営面積の拡大による規模の経済には圃場分散や過度な機械装備といった課題があり,組織法人経営の生産費や農業所得が個別経営よりも必ずしも優れていないことも明らかである。そこで本稿は個別稲作経営の経営戦略の差異を示すことを目的として,低コスト経営と高コスト経営の生産構造の比較分析を行った。データは農業経営統計調査の米生産費統計(個別経営体:2008-2017年度)の1,911経営体をパネルデータ化したものを用いた。結果として以下の点が明らかになった。第一に,10a当たり全算入生産費の平均値は10-15ha層から20-30ha層まで段階的に低下していた。第二に,東北地方では大規模低コスト経営は単位利潤が優れている一方で,大規模高コスト経営が単収や所得の点で低コスト経営よりも優れていることが示された。第三に,大規模高コスト経営の特徴として,自作地割合が高い点,実勢地代水準が高い点,大区画圃場の割合が高い点,家族労働力を特に管理作業に多く投入している点などが挙げられた。ただし,経営の更なる耕作面積の拡大が期待できるのは低コスト借地型経営であり,個別の経営戦略の多様性を考慮しつつ地域農業を展望し,方策を考えることの重要性を示しているといえる。

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