東南極スカルブスネス露岩域の沿岸湖沼・親子池の湖底堆積物に記録された氷床後退後の基盤隆起と環境変化の復元

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  • Reconstruction of Antarctic coast environment change along ground uplift and ice-sheet retreat recorded in the sediment of Lake Oyako of Skarvsnes, East Antarctica

抄録

<p>南極氷床の末端にあたる南極沿岸部の地形や生態系は,氷河性地殻均衡による地殻変動と関連するため,南極氷床の後退過程に強い影響を受けると考えられている.Kawamata et al. (2020)は東南極リュッツホルム湾東岸にある複数の露岩域において,完新世における氷床後退年代を表面露出年代を用いて示した.そこで,氷床後退後の露岩域の地形変化と生態系変遷を明らかにするため,露岩域の低地湖沼堆積物を採取し,珪藻化石を用いた古環境復元を行った.調査地はリュッツホルム湾東岸のスカルブスネス露頭域,その内湾であるオーセン湾に面した湖沼・親子池である.親子池の湖心から採取された柱状堆積物試料は,コア底部に氷河性シルトが堆積し,氷床後退時の堆積記録が残されている.氷河性シルト層上部の堆積年代は,Kawamata et al. (2020)が示したスカルブスネス半島の北部と南部の氷床後退年代より早く,スカルブスネスでは親子池があったオーセン湾南部で氷床がより早く後退したことを示している.氷河性シルト層上部には海生珪藻が産出し,この層の直上では内湾性珪藻が多産するため,オーセン湾南部での氷床後退には海水の流入が関連した可能性がある.また親子池の珪藻群集は,中期完新世初頭のスカルブスネス南部および北部の氷床後退に伴って一旦開放的な海洋環境となるが,中期完新世以降次第に閉鎖的になったことを示しており,約5,000年前から約2,000年前にかけて沿岸海洋種が優占し,2,000年前からは複数の汽水種が交代で優占,約1,000年前より淡水珪藻が優占種といった顕著な優占種の移り変わりを示している.この変遷は,氷床後退後のスカルブスネス露岩域の隆起に伴うオーセン湾の閉塞化とその後の親子池一帯の閉塞化を反映していると考えられるため,氷河性地殻均衡による氷床後退後のスカルブスネス露岩域の隆起速度を明らかにしている.</p><p></p><p>引用文献 Kawamata et al. (2020) Quaternary Science Reviews 247, 106540.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390577133287304192
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2022.0_79
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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