カシミール3Dによる立体地形図の普及

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  • Spreading 3D Topographic Maps Using the Kashmir 3D System

抄録

<p>著者は1991年頃に、地形モデルから風景を再現する試みを行った。現在のようにインターネットから各地の風景映像を簡単に見られる状況で無かったことから、特徴的な地形がある場所にもかかわらず、写真資料が少ない地域の風景を再現することを目的としたものであった。紙の地形図の謄本から等高線を数値化してPCに取り込み、そこにTINを張ってポリゴン化して行く方法を取った。この方法は等高線の数値化に非常に労力がかかることから、1つの地形モデルを作るのに2~3週間を要した。その後、パソコン用ソフトウェアである「カシミール3D」を1994年に発表した。これは、国土地理院のDEMデータを用いて、それまで田代博(1991)によるように、手計算で作成していた可視マップを、パソコンで短時間に計算し、表示することを目的としたものであった。改良をすすめる中で、DEMデータから3D立体地図を表示できるようにしたが、DEMデータの価格が非常に高く、一般での入手には困難であったため、普及は難しい状況であった。1997年に国土地理院がDEMデータである数値地図をCD-ROM化して販売を開始したことにより、価格が下がり、一般での入手が容易になったことから、本ソフトウェアの需要が高まり、地形を3Dで立体的に見るという行為が一般に普及した。また、米国製のハンディタイプのGPSが普及し始め、登山などの場面でも使用されるようになった。GPSのルート設定や、取得したデータの処理などが必要となり、カシミール3Dに実装した。3D地形と合わせることで、航空分野においての利用もあった。2001年からは、インターネットサービスとして「山旅倶楽部」を開始し、地図とDEMをタイル形式のデータにしインターネットからカシミール3Dに配信できるようにした。2005年にGoogle Mapが登場するよりも前であり、タイル地図を使用したサービスとしては先駆けとなった。DEMは当初は50mメッシュであったが、途中から10mメッシュに変更した。ネットさえつながれば日本全国の3D地形や地図がみられるようにした点でも先進的であった。当時の国土地理院はFAX地図という、白黒の地図を見られるサービスしか行っていなかったため、カシミール3Dでの地図サービスは非常に有益であった。2003年に国土地理院が5mメッシュを提供しはじめ、都市部の微地形が注目される。5mメッシュを使用してカシミール3Dで地形を立体的に可視化することで、都市の発展と地形の関係を容易に論じられるようになり、皆川典久 (2012)による「スリバチ学会」などの活動に影響を与えることとなった。さらに微地形の可視化を改善するために地形をより強調する地形表現手法を開発し「スーパー地形表現」という名称で2015年から提供している。これには、全国の5mメッシュDEMを入手しやすくまとめたネットサービス「スーパー地形セット」を同時に提供し、高精細の地形の可視化が誰でも容易になった。「スーパー地形表現」の地図はNHKの「ブラタモリ」でも地形解説用の図版としてたびたび使用されている。2016年からはスマートフォンのアプリで、カシミール3Dの機能と地図を提供しているほか、ARで立体地形図が使用できるアプリも製作、公開している。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390577144549274880
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_110
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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