Coral reefs around the coast of Yonaguni Island, Ryukyu Archipelago

Bibliographic Information

Other Title
  • 琉球列島・与那国島沿岸のサンゴ礁地形
  • distribution areas and their distinctive features
  • 分布海域とその特徴について

Description

<p>1.はじめに </p><p> サンゴ礁地形は従来、航空写真で視認される低潮位付近の平坦な礁原とその陸側の浅礁湖の広がりによって認識されてきた。与那国島の海岸は、ほとんどが第三紀八重山層群の砂岩泥岩層あるいは更新世琉球層群の石灰岩からなる海食崖で構成され、航空写真から視認できる与那国島のサンゴ礁礁原は、北東岸に幅150m程度の裾礁が約2km、南岸の比川沖に幅150~500mの裾礁が約1.8kmの範囲でみられるのみである。近隣の石垣島では幅1km程度の裾礁が島のほぼ全周を取り巻き、石垣島と西表島の間には約20×15kmの広がりを持つ石西礁が発達するのとは対照的である。</p><p> 一方、高緯度の琉球列島で発達するサンゴ礁では、礁斜面(礁原の沖に広がる斜面)が熱帯域の環礁や堡礁の礁斜面より広く、緩傾斜である(堀 1980科学, 50:149-160)。礁斜面の地形やその広がりを含めてサンゴ礁地形を論じ得たとき、サンゴ礁の全体像が明らかになるとともに、各地域のサンゴ礁の特徴が再評価されるであろう。本研究では、与那国島の沿岸域におけるサンゴ礁礁斜面の広がりを明らかにすることを試みた。島の周囲にわたって、サンゴ礁礁斜面の地形とその分布について明らかにしようとする研究は、日本で初めて、世界でもほとんど行われていない。 </p><p></p><p>2.調査地域と研究方法 </p><p> 琉球列島・与那国島において、2017年12月に南岸域、2018年7月に北岸域を対象として、ワイドバンドマルチビーム測深機(R2 Sonic 2022)を用いて浅海域の海底地形測量を行った。測深域は水深1.2m~382.1mであるが、概ね水深150m程度までの海域を対象とした。測深結果は3次元可視化ソフトウェアFledermausにて可視化した。また、2016~2022年にSCUBAを用いた潜水調査を行い、海底地形や堆積物などの観察を行った。</p><p></p><p>3.与那国島のサンゴ礁地形 </p><p> 与那国島では裾礁の発達する2海域で、広大な礁斜面の広がりが認められた。</p><p> 北東岸の祖納―東崎間の沿岸約4kmにわたって、岸沖方向約500mの大規模なサンゴ礁地形が認められた。ここでは水深25m以浅の海域でサンゴ礁地形の広がりが顕著であり、比較的穏やかな海域でみられるタイプの礁地形およびサンゴ群集が発達する。北東岸の沖には、水深10m以浅の浅瀬ナカビシ(中干瀬)が直径約1kmの範囲に広がる。ナカビシの北側には水深20~45mの崖が800mにわたって続くが、この崖は八重山層群の侵食地形とみられる。また、ナカビシ北側に数本の明瞭な溝状地形がみられるが、溝の間隔(40~70m)はサンゴ礁の縁脚縁溝より広いこと、溝の周囲が極めて平坦な地形であり、造礁サンゴの累重した痕跡が乏しいことから、ナカビシは八重山層群の堆積岩によってその概形がつくられているとみられる。サンゴ礁の地形はナカビシの南部より島側で認められる。北東岸には裾礁の400mほど沖に、頂部水深15mに達するサンゴ礁列が礁縁と平行にみられ、ダブルリーフの地形を呈する。リーフ間には礁性砂が堆積する。</p><p> 南岸の比川沖では、礁斜面の地形が礁縁沖約500mの範囲で認められる。礁縁付近では縁溝の上部がサンゴの成長によって塞がれたリーフトンネルが多数並走する。リーフトンネルの内部は円磨されたサンゴ巨礫と、それによって研磨された縁溝壁がみられる。ここでは北海岸と対照的に、強波浪環境下でつくられるサンゴ礁地形が存在する。</p><p></p><p>謝辞:本研究はH28-R2年度科研費 基盤研究(S) JP16H06309, R3-6年度基盤研究(A) JP21H04379およびH29~31年度の那国町―九州大学浅海底フロンティア研究センター間の受託研究(いずれも代表者:菅 浩伸)の成果の一部です。</p>

Journal

Details 詳細情報について

Report a problem

Back to top