ナイジェリアにおける地域的平等問題と大統領選挙

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  • Quest for Regional Equality and Presidential Election in Nigeria

抄録

<p>はじめに</p><p> アフリカにおける大統領選挙は、政治の民主化度をはかることができるイベントとして全世界から注目が集まる。欧米諸国が選挙監視団を派遣するのもこのためである。 </p><p> 1960年の独立後まもなくビアフラ内戦(1967-70年)を経験したナイジェリアは、選挙が公平かつ平和裏に実施できるよう様々な制度的組織的改革を行ってきた。その時に最も注意が払われてきたのが、民族主義的分離運動の阻止であった。その阻止にあたって重要な理念として掲げられてきたのが地域的平等念であった。 </p><p> ナイジェリアは、新州創設による行政区画の細分化、地方交付税分配方式の法制化、政党の全国的性格規定、大統領候補者選考の地域輪番制、そして内閣構成メンバーの全国制などを相次いで制定し、アフリカの中でも珍しく重厚な法的・制度的特徴を持つ国となっている。  </p><p> 本報告では、このような法的・制度的枠組みの中で実施される大統領選挙が、地域的平等の理念にどのように関り影響されてきたのかについて考察してみたい。 最初に地域的平等性の理念に関わるナイジェリアの制度や組織に見られる特徴について検討し、その後に2023年の大統領選挙の結果についても若干の考察をしたい。 </p><p> 政党の全国的性格規定 </p><p> 大統領選挙に参加する政党は全国的政党でなくてはならないと1979年憲法で定められ、これは今も有効である。すなわち、党名、党の紋章に民族や宗教を示唆するものは含まず、党員は全国民に開かれ、本部を首都に置き、執行部の構成が全国でなくてはならないとされている。  </p><p> 大統領候補者選考でみられる地域的平等性の議論 </p><p> 1998年の憲法制定に先立つその憲法草案の委員会で、大統領の地域輪番制が正式に議論された。これは憲法には明記されなかったのであるが、有力政党の一つである国民民主党(Peoples Democratic Party: PDP)の綱領に明記された。PDPが1999年の選挙で勝利したことでこの輪番制は意味ある制度として後の政治を縛るものとなった。 </p><p> 選挙規定に見られる大統領の全国的性格 </p><p> 大統領は全国的に支持される必要があるとして、1998年憲法で、当選者は全ての州(36州)の3分の2以上の州(24州)および連邦首都地域で投票数の25%以上の得票を得なければならないとされた。</p><p> 政府の組閣の条件  </p><p> 政府は36州の全ての州から内閣のメンバーを選ばなくてはならないと1999年の憲法で規定された。2019年に大統領に就任したブハリ大統領は、この規定に悩まされ組閣に半年を要した。任命した閣僚の中には一度も会ったことがない人が複数いたと彼は率直に述べた。 </p><p>おわりに  </p><p> 2023年の大統領選挙では、PDPが大統領候補選出にあたっての輪番制を一時停止するといった変化はあったが、大筋上記の枠組みの中で実施された。  本報告では、これらの諸制度や慣習が地域的平等性の実現や保証にどのような意味を持っているかを検討し、さらに2023年の選挙結果も踏まえナイジェリアにおける今後の地域的平等の在り方について考察してみたい。 </p><p>参考文献: </p><p>拙著(2019)『物語 ナイジェリアの歴史-「アフリカの巨人」の実像』 中公新書2545</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390577144549399040
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_239
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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