ウクライナ侵攻後のロシア向け中古車輸出の変化と背景

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  • Changes and background of used car exports to Russia after the Russian invasion to Ukraine

抄録

<p>2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻に伴い、ロシアへ「西側諸国」を中心とした経済制裁が加えられたことにより、対露中古車輸出をめぐる環境は大きく変化した。これによる物流への影響について、本報告においては特に仕出港に見られる差異を考察し、その背景を明らかにしようとするものである。  </p><p> 対露中古車輸出台数は6月以降、前年度実績を上回って増加している。ロシアの一部金融機関に対するSwift排除により、決済に障害が生じたため一時的に輸出が停止したものの、決済の問題は早期に解決された。2022年輸出実績は、「2008年の金融危機」より後で最大となる見込みである。また、2022年の単価は過去最高となっている。</p><p> 輸出増をもたらした原因は次の様に整理できるだろう。   </p><p>  1.ロシア国内の新車供給制約 </p><p>  2.円安・ルーブル高</p><p>  3.日本産中古車の固定資産としての価値</p><p> その一方で、日本側各港からの輸出台数変化は、日本海側港湾と太平洋側港湾との間で大きな差異が見られた。日本海側港湾では3~4月から増加に転じた(特に伏木富山港)のに対し、太平洋側港湾では3月に輸出台数が激減し、6~7月まで輸出が停止した状態が続いたのである。</p><p> このような変化が生じた要因として考えられる背景は、  </p><p>  1.日本海側港湾での増加について</p><p>   ・業者集積の”残存”(立地の慣性)</p><p>   ・航路維持可能なオペレーター(と結びついた代理店) </p><p>   ・太平洋側からの転送</p><p>  2.太平洋側港湾での減少について</p><p>   ・付保の滞りによる配船リスク</p><p>   ・レピュテーションリスク </p><p>などである。</p><p> 中古自動車部品輸出についても注目すべき点がある。これまで貿易統計上、自動車部品(自動車の部分品)は新品と中古の区別がつかず、中古輸出の規模を正確に掴むことは難しかった。しかし日本からの対露新造部品供給が停止した現在、統計上現れる数値は基本的に中古と判断でき、中古部品輸出の規模が把握可能な状態となっている。</p><p> 今後に関して言えば、伏木富山港では貨物集中によりヤード不足、配船不足が生じ、船積み待ちが深刻となっている。これを緩和するため、七尾港、直江津港などへの貨物分散も生じている。一方で、太平洋側港湾からの輸出も現在はほぼ旧に復している。ロシア側の需要は旺盛であるが、ロシア側港湾の港湾物流が逼迫しており、価格等で好条件が生じてもこれ以上の輸出増は難しいと思われる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390577144549407744
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_281
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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