ポスト郊外化期における東京大都市圏外部郊外の選別

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タイトル別名
  • Selection among the Outer Suburbs in the Tokyo Metropolitan Area during the Post-Suburbanizing Period
  • Focusing on Centrality and Diversity
  • 拠点性および多様性に着目して

抄録

<p>Ⅰ 序論</p><p> 本研究では,東京大都市圏外部郊外における「選ばれる郊外」を対象に,その地域的特性およびポスト郊外との関連性について検証した.その際に,居住および就業の観点から,各地域の拠点性および多様性に着目して考察した.</p><p> 大都市圏郊外の中での不均質性の増大(中澤ほか2008)を踏まえると,大都市圏郊外の中でも差異が存在し,郊外は「選ばれる郊外」と「選ばれない郊外」に二分しつつある.</p><p> 人口減少および都心回帰の進む日本ではポスト郊外はみられないとされる(Sorensen 2011)が,「選ばれる郊外」における居住の動向はポスト郊外の特徴に合致する.すなわち,「選ばれる郊外」とポスト郊外には関連性をもつ可能性があり,ミクロな視点での検証が必要と考えられる.ここでは,居住地の選別の進行がより激しい外部郊外を研究対象とする.</p><p></p><p>Ⅱ 東京大都市圏における郊外の選別 </p><p> 「選ばれる郊外」の要因として,交通利便性および拠点性の高さが挙げられる.居住に関して,ホワイトカラー率およびその増分が大きい地域では交通利便性が高く,郊外の場合は,都心のほか郊外核への交通利便性の高さが必要条件と考えられる.就業に関しても,拠点性の高い地域への就業者の集中傾向が強化されている.東京大都市圏郊外で居住・就業ともに「選ばれる郊外」として位置づけられる地域として,茨城県内のつくばエクスプレス(TX)沿線が挙げられる.以下では,TX沿線と隣接する既存郊外住宅地を対象に分析した.</p><p></p><p>Ⅲ TX沿線のポスト郊外化</p><p> TX沿線では,東京大都市圏外部郊外の他地区より住宅所有および住宅形態の多様度が高い.この背景として,民営借家および共同住宅の構成比が高く,持ち家・戸建の構成比が低いことが挙げられる.これは,持ち家・戸建指向が低下傾向にある現代の住宅ニーズを反映したものである.さらに,伊奈・谷和原丘陵部,萱丸,島名・福田坪の3地区では居住者属性が相対的に多様であるほか,葛城地区などでは就業の場が存在し職住近接の性格が強い.このため,TX沿線では,ホワイトカラー集住など均質的な特性をもつベッドタウンとして位置づけられてきた従来の東京大都市圏郊外の住宅地(中澤ほか2008)ではみられないポスト郊外的な特徴をもつことが示された.</p><p> ただし,TX沿線内でも居住者属性および就業の特性の差異がみられる.筑波研究学園都市の研究学園地区から離れた地区,または駅から離れた町丁で職業の多様度が増大する.これらの地域ではグレーカラーおよびブルーカラーの構成比が相対的に高い.</p><p></p><p>Ⅳ ポスト郊外化期における郊外の発展要因</p><p> TX沿線では筑波研究学園都市の就業者が取得可能な住宅が供給されているとともに,東京への交通利便性の高さにより通勤時間の短縮と郊外居住を両立できるため郊外居住を指向する東京就業者の居住の場となっている.戸建住宅に限らずマンションも建設され,住宅に対する多様な需要に対応するとともに,駅周辺居住を可能としている.また,東京に近接し,常磐自動車道沿線であることから工場が立地しており,ブルーカラーの職住近接も実現している.このため,居住者の職業および社会階層を問わず居住地として選択でき,居住者属性が多様化した.本研究では,以下の3点の結論を得た.</p><p>1) 「選ばれる郊外」は,交通利便性および拠点性が高い地域である.</p><p>2) 茨城県内TX沿線は居住・就業ともに「選ばれる郊外」として位置づけられる.</p><p>3) 列車速度の高い鉄道路線の駅周辺は,都心への通勤利便性の高さと郊外の居住環境を両立できる地域であり,東京就業者,郊外核就業者の両者にとっての居住地選択の対象になる.このため,東京大都市圏における「選ばれる郊外」として位置づけられる.</p><p></p><p>付記</p><p>本研究は,東京大学CSIS共同研究(No. 1079)による成果である.</p><p></p><p>引用文献</p><p>中澤高志・佐藤英人・川口太郎 2008. 世代交代に伴う東京圏郊外住宅地の変容——第一世代の高齢化と第二世代の動向. 人文地理 60: 144-162.</p><p>Sorensen, A. 2011. Post-suburban Tokyo? Urbanization, Suburbanization, Reurbanization. In International Perspectives on Suburbanization: A Post-Suburban World?. ed. N. A. Phelps and F. Wu, 210-224. London: Palgrave Macmillan.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390577144549410176
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_289
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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