A Comparative Study between Japan and South Korea about the Specialization of National Railways in Medium- and Long-Haul Transportation
-
- Shibata Takumi
- Graduate Student, the Univ. of Tokyo
Bibliographic Information
- Other Title
-
- 国鉄の中長距離輸送特化に関する日韓比較研究
- Why was the Specialization possible in South Korea?
- 韓国ではなぜ可能だったのか
Description
<p>Ⅰ 初めに</p><p> 鉄道の短距離輸送と中長距離輸送の区分や特化は,欧米では鉄道事業の不採算という問題に起因して既に議論が行われ,実際の政策に反映されている.一方で欧米と異なる条件を有する日本では,欧米とは大きく異なる議論があったと考えられる.</p><p> 分析に当たっては,日本と類似した条件にもかかわらず異なる選択肢を採った国と対比させることで,日本が短距離輸送を維持し続けた理由がより一層明確になると考えられる. 本発表では比較対象として韓国を取り上げる.両国は高い人口密度や大都市の配置といった国土の特性,交通機関の近代化過程が共通しており(高 2006),また植民地時代には日本の植民地支配下で鉄道の導入が進んだことから,日本の鉄道事業のモデルが或る程度定着した(高 1999; 李・鄭 2015)という背景がある.短距離輸送と中長距離輸送を明確に区分している韓国では,戦後になって鉄道を中長距離輸送へ特化させた.</p><p> 日本では実現しなかった短距離輸送からの撤退と中長距離輸送への特化が,韓国では可能だったのはなぜか.日本については,不採算路線を中心として鉄道事業の縮小・廃止に関連する研究の蓄積があり,日本において鉄道事業の縮小・廃止時に問題となってきた点が韓国ではどうだったのか明らかにするのが適切であると考えられるが,これまでそうした研究は行われてこなかった.</p><p> 以上のような問題意識に基づき,両国の比較の上で,鉄道の中長距離輸送への特化に影響を及ぼす要因に関する研究,及びその成果の発表を行ってきた(柴田 2022a, b).それらを踏まえ本発表では,両国で差異が生じた主要因として,①線路容量,②政治システムと政策,③利便性及び運賃の格差の3点に焦点を当てる.</p><p> 尚,両国共に国鉄及びその後継事業者が全国的な鉄道網を有していることから,本発表では国鉄及びその後継事業者に対象を限定する.</p><p></p><p>Ⅱ 考察</p><p> 上述の3点について,それぞれ以下のことが明らかとなった.</p><p>①日本の主要幹線では車社会化の進展と同時期に線路容量に余裕が生じたため,短距離輸送に注力して自動車と競争するという選択が可能であったが,韓国の主要幹線では車社会化が進展する時期に未改良のままだったため短距離輸送に注力できず,路線バスに短距離輸送を委ねる一因となった.</p><p>②両国で鉄道事業の赤字の解消という大きな目的が共通する中で,日本では合理化への反対が根強かったことから,駅の廃止を伴う中長距離輸送への特化ができなかった.韓国では中長距離の優等列車優先ダイヤが続く中で車社会化が進行して路線バスが急速に発達し,利便性に大きな差があったため,短距離輸送機関としての役割を路線バスに移すことが容易だった.加えて,物価抑制政策により普通列車の運賃が低水準だったため,国鉄には普通列車を減らして優等列車を増やすインセンティブがあった.</p><p>③両国共に国鉄の運賃が物価抑制政策により低水準だったことは共通している.しかし,日本では路線バスの運賃は物価抑制政策の影響をほとんど受けず,物価の上昇や利用者の減少に対応して運賃も上昇したため,国鉄と路線バスの運賃の差が広がり,並行する路線バスは縮小していった(大島 2009).一方,韓国では路線バスの運賃も物価抑制政策により低水準に据え置かれたため,国鉄と路線バスの運賃の差が小さく,日本ほど並行する路線バスへの転移に支障が無かったと考えられる.</p><p></p><p>Ⅲ 終わりに</p><p>他にも比較の観点が考えられるが,それらについては未だ充分検討できておらず,今後の課題として残されている.また本発表の分析方法を修正,拡張することにより,国家ごとの交通体系の形成史の比較研究へと発展させていくことも可能であろう.</p><p></p><p>文献</p><p>大島登志彦 2009.『群馬・路線バスの歴史と諸問題の研究』上毛新聞社.</p><p>高 成鳳 1999.『植民地鉄道と民衆生活 朝鮮・台湾・中国東北』法政大学出版局.</p><p>高 成鳳 2006.『植民地の鉄道』日本経済評論社.</p><p>柴田卓巳 2022a.短距離交通体系の日韓比較に関する予備的報告,2022年度日本地理学会春季学術大会.</p><p>柴田卓巳 2022b.戦後における鉄道政策の日韓比較―中長距離輸送への特化を巡って―,鉄道史学会2022年度第40回大会.</p><p>李 容相・鄭 炳玹 2015.韓国,日本,満洲の鉄道現況比較研究: 1920年代中盤日帝強占期を中心に.韓国鉄道学会論文集 18(2): 157-165.(韓国語)이용상, 정병현 2015. 한국, 일본, 만주의 철도현황 비교연구: 1920년대 중반 일제강점기를 중심으로. 한국철도학회 논문집 18(2): 157-165.</p>
Journal
-
- Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers
-
Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2023s (0), 310-, 2023
The Association of Japanese Geographers
- Tweet
Details 詳細情報について
-
- CRID
- 1390577144549412736
-
- Text Lang
- ja
-
- Data Source
-
- JaLC
-
- Abstract License Flag
- Disallowed