「まちやど」による地域の持続可能性について

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タイトル別名
  • Sustainability of the region by machiyado
  • : A Case Study of Busshozan Hot Springs in Kagawa Prefecture
  • -香川県仏生山温泉を事例として-

抄録

<p>本研究では,「まちやど」による地域の持続可能性について検討を行う.「まちやど」とは,まちを一つの宿と見立て,ゲスト(宿泊客)とまちの日常をつなげていく宿泊施設である.「まちやど」のスタッフは,宿泊施設内の案内をするだけでなく,まちのコンシェルジェとしての役割を担い,地元の人たちが日常的に楽しんでいる飲食店や銭湯などの案内を行う.そして,まちぐるみで宿泊客をもてなすことで地域価値を向上し,まちの中にすでにある資源やまちの事業者をつなぎ合わせ,そこにある日常を最大のコンテンツとする.利用者には世界に二つとない地域固有の宿泊体験を提供し,まちの住人や事業者には新たな活躍の場や事業機会を提供する.この「まちやど」を提唱しているのが,一般財団法人日本まちやど協会で,同協会に加盟している宿泊施設は,日本全国に25施設ある. 「まちやど」の概念は,イタリアにおけるアルベルゴ・ディフーゾと類似点が多い。アルベルゴ・ディフーゾは,ジャンカルロ・ダッラーラ氏が1980 年代に提唱した概念で,使用されていない歴史的な建造物を再利用し,レセプションを中心に客室が点在する 「分散型ホテル」とも言われている (Liçaj 2014).空家をレセプションや客室・レストランなどに改修し,宿泊施設の要素を地域全体に分散させることで,地域全体を宿泊施設とする考え方で(渡辺ほか 2015),旅行者は地域で暮らすような感覚で滞在できる.アルベルゴ・ディフーゾの最終目標は、地域に人を呼び戻すことで、アルベルゴ・ディフーゾとして登録されている地域では、地域の経済を支える人々が増えている 本研究においては,日本まちやど協会に加盟している香川県高松市の仏生山まちぐるみ旅館を対象に,「まちやど」が形成されるプロセス,「まちやど」が地域に及ぼす効果を検証し,地域の持続可能性について検討を行う. 仏生山まちぐるみ旅館は,2012年に開業した宿泊施設で,旅館の当主は,代々,仏生山で宴会施設や飲食業を営んでいた家の4代目である.東京の建築事務所に勤めた後,家業を継承しながら建築事務所を地元で開業するために仏生山へUターンした.そのタイミングで当主の父が仏生山で温泉を掘りあてたので,4代目は2005年に仏生山温泉を開業し,その後,まち全体を旅館に見立てる仏生山まちぐるみ旅館を2012年に開業した. 仏生山まちぐるみ旅館の開業後に新たに出来た店舗は21に及び,新規事業者は,Uターンして起業した人,仏生山まちぐるみ旅館の理念に共感して移住してきた人など,さまざまである.これらの新規事業者は,飲食店以外にも,雑貨店,古本店,図書館など,地域に文化やコト(体験や経験)を提供している. 仏生山まちぐるみ旅館がもたらした地域の変化,4代目の関わり,新規事業者の思考などを検討し,「まちやど」による持続可能な地域のあり方について報告を行う.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390577144549421696
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_46
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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