抗菌薬投与が小児の腸内細菌叢に及ぼす影響

書誌事項

タイトル別名
  • Effects of antibiotics on childhood gut microbiota

抄録

<p>腸内細菌叢はヒトの腸管内で一定のバランスを保ちながら共存している多種多様な細菌集団である.近年,遺伝子解析技術の進歩に伴い腸内細菌叢の研究が加速しヒトの健康に果たす役割の重要性が明らかとなってきた.特に小児期の腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)はその後の疾患発症のリスクを上昇させるため,dysbiosisの予防や是正は,生涯を通じた健康維持や促進につながる可能性がある.腸内細菌叢の形成に影響を与える様々な因子の中でも,抗菌薬投与が腸内細菌叢に及ぼす負の影響は大きい.そこで筆者らは抗菌薬の長期投与が乳幼児の腸内細菌叢に及ぼす影響を明らかにするため,有熱性尿路感染症の乳幼児を対象とした検討を行った.その結果,治療量のセフェム系抗菌薬の投与は腸内細菌叢の多様性を著明に低下させ,耐性のLactobacillales目が腸内細菌叢のほとんどを占めるようになること,しかし投与中止後1–2か月で多様性は回復すること,その後少量の予防量(0.2 g/日)のST合剤の持続投与を行っても多様性は乱されず,腸内細菌叢に及ぼす影響は小さいことが明らかとなった.そしてST合剤の少量持続投与中,尿路感染症の起因菌が属するEnterobacteriales目の構成割合が抑制されていたことから,ST合剤の少量持続投与は有熱性尿路感染症の再発予防に有効かつ安全な治療であると考えられた.</p>

収録刊行物

参考文献 (36)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ