高齢者における近隣の生鮮食料品店の有無の変化と歩行時間の変化:JAGES2016-2019縦断研究

  • 小林 周平
    千葉大学大学院医学薬学府 千葉大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 陳 昱儒
    千葉大学大学院医学薬学府 千葉大学予防医学センター
  • 井手 一茂
    千葉大学予防医学センター
  • 花里 真道
    千葉大学予防医学センター 千葉大学デザイン・リサーチ・インスティテュート
  • 辻 大士
    千葉大学予防医学センター 筑波大学体育系
  • 近藤 克則
    千葉大学予防医学センター 国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Changes in the neighborhood food environment and walking time among older adults: A longitudinal Japan Gerontological Evaluation Study (JAGES) between 2016 and 2019
  • コウレイシャ ニ オケル キンリン ノ セイセン ショクリョウヒンテン ノ ウム ノ ヘンカ ト ホコウ ジカン ノ ヘンカ : JAGES2016-2019 ジュウダン ケンキュウ

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抄録

<p>目的 高齢者の歩行量を維持・増加させることには多くの健康上望ましい効果が期待できる。しかし,健康日本21(第二次)中間評価では,高齢者の歩数が目標値まで達成できなかったことが報告されている。そのため,従来とは異なるアプローチに建造環境(街路ネットワーク,施設や居住密度,土地利用など人工的に造られる環境)を通じた身体活動量や歩数の維持・増加をもたらすゼロ次予防が注目されている。本研究では,建造環境の1つである生鮮食料品店の変化と歩行時間の変化との関連を明らかにすることを目的とした。</p><p>方法 日本老年学的評価研究(JAGES)が27市町の要介護認定を受けていない65歳以上を対象に実施した自記式郵送調査データを用いた2016・2019年度の2時点での縦断パネル研究である。目的変数は,歩行時間の2時点の変化(増加あり・なし)とし,説明変数は追跡前後の徒歩圏内にある生鮮食料品(肉,魚,野菜,果物など)が手に入る生鮮食料品店の有無の2時点の変化を5群にカテゴリー化(なし・なし:参照群,なしとわからない・あり,あり・あり,あり・なしとわからない,その他)したものである。調整変数は2016年度の人口統計学的要因,健康行動要因,環境要因,健康要因の計14変数とした。統計分析は,ロバスト標準誤差を用いたポアソン回帰分析(有意水準5%)で歩行時間の増加なしに対する歩行時間の増加ありとなる累積発生率比(cumulative incidence rate ratio:CIRR)と95%信頼区間(confidence interval:CI)を算出した。分析に使用する全数のうち,無回答者などを欠測として多重代入法で補完した。</p><p>結果 歩行時間の増加ありが13,400人(20.4%)だった。追跡前後で徒歩圏内の生鮮食料品店の有無の変化が「なし・なし」(6,577人,10.0%)と比較した場合,「なしとわからない・あり」(5,311人,8.1%)のCIRRは1.12(95%CI:1.03-1.21)だった。</p><p>結論 徒歩圏内の生鮮食料品店が増加していた者で,高齢者の歩行時間が増加した者の発生が12%多かった。暮らしているだけで歩行量が増える建造環境の社会実装を目指す手がかりを得られたと考える。</p>

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