日本における統合報告書の開示実態と開示企業の特性分析

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  • ニホン ニ オケル トウゴウ ホウコクショ ノ カイジ ジッタイ ト カイジ キギョウ ノ トクセイ ブンセキ

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抄録

本論文は、日本における統合報告書の開示実態を明らかにし、開示企業の業種特性と統合報告書の内容の特徴を明らかにすることを目的としている。近年、企業の価値創造プロセスにおける知的資産ないし無形資産の重要性がますます認識されるようになり、従来の財務情報を中心とした報告制度はこのような知的資産ないし無形資産の価値を報告するのに限界がきた。また、世界的な金融危機をきっかけに、投資意思決定、企業行為および企業報告をより良く連携して財務の健全性および持続可能な発展を促進するニーズがグローバル的なものになった。そこで、企業とその利害関係者はともに財務情報と非財務情報を統合して開示し、企業価値をより正しく評価できる新たな報告書を求め、その結果、統合報告書を作成・公表する企業が増えつつある。国際統合報告評議会(IIRC)が発足し、統合報告書のフレームワークを提示したことと同時に、南アフリカでは統合報告書の発行を企業の上場要件として義務付け、世界主要各国においても統合報告書を開示する企業の数は増えつつある。日本においても、2014 年までに142 社の企業が統合報告書を開示するようになった。上場企業全体数に照らして、依然として開示企業数が少ないが、統合報告 書の開示現状を明らかにすることで、今後の統合報告の理論と実践に資したい。本研究は統合報告書を開示する日本企業の業種分布や、報告書の内容等について分析し、その特徴を浮き彫りにし、特に開示意欲の高い業種を明らかにする。また、統合報告書を開示する際に、非財務情報について保証を行う組織の現状や存在する問題について指摘する。さらに、統合報告書の開示目的はステークホルダーとのコミュニケーション等を視野に入れる企業が増える一方で、投資家中心の報告書も依然として存在していること、IIRC の内容要素と指導原則を適用する企業の増加に伴い、統合報告書の比較可能性を図ることが期待できることも示したい。

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