企業の税負担削減行動とCSRの関係を巡って

DOI
  • 玉 越豪
    神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程

書誌事項

タイトル別名
  • コーポレートガバナンスの視点からの考察

抄録

先進諸国において、国際的な税制度の抜け穴を利用した多国籍企業の税負担削減行動に対して、税源確保の観点から批判が強まっている。それに伴い、適切な租税支払いは企業の果たすべき社会的責任の一部ではないかという切り口から、企業の税負担削減行動とCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)との関係について規範的に論じる研究、および両者の関係を実証的に分析する研究が増加している。しかし、シェアホルダー理論とステークホルダー理論という対照的な企業観を持つ両理論のいずれかを基にした既存研究は、多国籍企業の租税回避という現実の課題に対して、政策形成に資するような実践的な含意を必ずしも提示できてはいない。本稿は、英国のコーポレートガバナンス改革の嚆矢となったESV(Enlightened Shareholder Value:啓発的株主価値)論に基づき、企業の税負担削減行動とCSR との関係に関する規範理論の導出を行った。その規範理論は、株主の利益を一義的には追求しながらも他のステークホルダーの利益を考慮した上で、CSR の観点から租税回避行為に自ら一定の制限を課す倫理感を持つことを、経営者の義務としてコーポレートガバナンスの制度上で明確に位置付ける必要性を掲げている。その上で、企業統治のあり方を規定するコーポレートガバナンス・コードの中に、経営者が税支払いに関して負うべき責任についての原則と具体的行動を記載するというソフトローによる政策アプローチを提案している。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390577431256782720
  • DOI
    10.60210/jicm.2016.2_140
  • ISSN
    27587355
    27586936
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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