常緑樹は低温下でどのように光障害を防いでいるのか?
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- 田中 亮一
- 北海道大学低温科学研究所
書誌事項
- タイトル別名
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- How do evergreens stay green under low temperatures?
抄録
<p>光合成反応はその原理からいって、低温に弱いと考えられている。光吸収は気温にはあまり関係なく進み、電子伝達を引き起こすが、低温下ではカルビン回路の活性が著しく下がり、行き場を失った電子が活性酸素の発生を引き起こすからである。これを回避するため、寒冷圏の常緑樹は、冬季は光強度に関係なく大部分の励起エネルギーを熱として放散する分子機構を有する。この機構の実体を明らかにするために、イチイなどの常緑樹を材料に、トランスクリプトーム、光化学系複合体、光合成色素などの解析を行った。その結果、冬期のイチイのトランスクリプトームの15%以上をELIPとよばれるクロロフィル結合タンパク質のmRNAが占め、このタンパク質は光化学系のアンテナに匹敵するほどの数が蓄積しうることが明らかとなった。また、時間分解クロロフィル蛍光測定によって、冬期には光化学系IIおよびIの両方において熱放散が促進されていることが示唆された。これらの結果から、イチイでは、ELIPが熱放散によって光化学系の電子伝達を抑制していると考えられる。本研究は、森林総研北海道支所、神戸大学、基生研との共同研究によって行われた。</p>
収録刊行物
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- 日本森林学会大会発表データベース
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日本森林学会大会発表データベース 134 (0), 45-, 2023-05-30
日本森林学会