ラオス人民民主共和国の肺吸虫種と中間宿主および肺吸虫症

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  • ラオス ジンミン ミンシュ キョウワコク ノ ハイキュウチュウシュ ト チュウカン シュクシュ オヨビ ハイキュウチュウショウ

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抄録

要約 病原性肺吸虫によるヒト肺吸虫症は今日の日本ではほとんど見られない食品媒介性感染症の1つである。しかしアフリカや南米,東南アジア諸国では今日なお重要な寄生虫感染症として知られている。ここではこれまでほとんど報告が無かったラオスの肺吸虫種の病原性および同国のVientiane 首都圏を中心とした市場で調査した中間宿主の感染状況と調査を通じて新たに見つかった肺吸虫種の形態学的特徴および系統について述べた。ラオスは1975年から1988年まで鎖国をしており,1970年代前半まで知られていた肺吸虫症の起因種はParagonimusheterotremus のみであった。しかし,2012年以降Institut de la Francophone pour la Medecine Tropicale(IFMTと我々の調査からVientiane 県Hinheub(ヒンヘウブ)郡で採取した中間宿主である2種のカニPotamon lipkeiとChulathelphusa brandti を特定した。そして,P. lipkei 10匹から採取したメタセルカリア782個を実験動物に感染させ成虫を得た。その結果,形態的に同定したP. bangkokuensis およびP. harinasutai の2種に加えて,P.paishuihoensis が新たに確認された。また,C. brandti の17検体から1個のP. westermani のメタセルカリアが観察され,同国では肺吸虫が5種分布することが明らかとなった。またP. westermani を除く新たに得られた4種について,遺伝学的マーカーとしてinternal transcribed spacer 2( ITS2)と cytochrome oxidase subunit 1(CO1)の二つを用いて解析した結果,P. bangkokensis およびP. harinasutai,P. paishuihoensis の3種が近縁であることが示された。また,これまでの患者調査からこれらの4種間でラオスにおける肺吸虫症の病原として重要な種はP. heterotoremus であることが判明した ビエンチャン首都圏およびラオス国内の市場で調査した中間宿主となりうるカニEsathelphusa spp. とPilosamon palustre のほとんどは水田で捕獲されている。これらの394匹のサンプル調査ではParagonimus 種の感染幼虫は認められず,ヒトへの感染リスクは非常に低いことが示唆された。

収録刊行物

  • 看護学統合研究

    看護学統合研究 24 (2), 1-13, 2023-02-28

    広島文化学園大学看護学部

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