足部内在筋の形態と片脚ドロップ着地時の力減衰との相関関係

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抄録

<p>【はじめに】</p><p>ジャンプ着地時に発生する力を減衰することは、スポーツ傷害を予防するために重要である(Pedley et al, 2020)。着地時に身体へ加わる力が増大するにつれて、足関節から股関節へ力減衰の貢献度が変化するため(Zhang et al, 2000)、できる限り身体の遠位で力減衰が行われれば、着地時に身体に加わる力を安全に減衰できるポテンシャルが高いと考えられる。足部は地面と初めに接触するため、足部でも力減衰が行われることが望ましい。足部を構成する足部内在筋は超音波画像によりその形態が評価できるが、足部内在筋の筋形態が着地時の力減衰に関係しているかは不明である。そこで本研究は、足部内在筋形態が着地時の力減衰に関係するか調査し、足部内在筋が力減衰に貢献するか考察することとした。</p><p>【方法】</p><p>過去半年以内に下肢に整形外科的疾患のない21名(女性:4名、年齢:23.3±1.7歳、身長:169.8±8.2 cm、体重:59.9±9.0 kg、Body mass index:20.7±2.2 kg/m 2 )を対象とした。Tas et al(2020)の方法に従い、超音波画像診断装置(日立)で母趾外転筋、短母趾屈筋、短趾屈筋の筋断面積[mm2]と筋厚[mm]を計測した。加えて、鈴木ら(2018)の方法で30cm台上から床反力計(Kistler)へと片脚ドロップ着地を実施し、体重で正規化した鉛直方向床反力ピーク値(以下、ピーク値)[%BW]、ピーク時間[ms]、ピーク値をピーク時間で除したRate of force development(RFD)[%BW/s]を求めた。3回分の平均値を代表値とした。統計学的解析として、Shapiro-Wilk検定で正規性があると認められればピアソンの積率相関係数、正規性がなければスピアマンの順位相関係数を算出した。有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>短母趾屈筋の筋断面積(214.3±50.4 mm2)とピーク値(458.4±90.6[%BW])の間に有意な負の相関関係(r =-0.472、p = 0.031、95% 信頼区間-0.745~-0.038)が認められた。その他の変数どうしに有意な相関関係は認められなかった。</p><p>【考察】</p><p>短母趾屈筋はドロップ着地時の力減衰に貢献している可能性が示唆された。Olsen et al(2019)は、第一中足趾節関節はドロップ着地時の瞬間に急速に20度まで伸展されると報告している。第一中足趾節関節をまたぐ短母趾屈筋は、このとき遠心性に収縮して接地時の母趾伸展運動に応じて力を減衰させている可能性がある。加えて、短母趾屈筋は内側筋間中隔を介して足底腱膜の停止部である踵骨隆起部に停止している(Martin et al, 1964)。つまり、ウィンドラス機構のように第一中足趾節関節の伸展に伴い、足部の剛性を調節して力減衰に貢献している可能性がある。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究の目的および研究方法を口頭および書面にて十分に説明し,同意を得られた者を対象とした.なお,本研究は広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:E-2090).</p>

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