地域在住障害高齢者におけるバディスタイル介入の運動定着効果:無作為化比較試験

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p>高齢者の運動継続率向上のための介入方法として,バディスタイル介入(仲間同士でサポートしあって運動を促す方法)の有効性が示されている.しかし先行研究では健常なボランティアをバディとしており,障害高齢者同士の介入効果は明らかとなっていない.そこで本研究では,地域在住障害高齢者同士のバディスタイル介入が12週間の在宅運動プログラムの運動継続率および身体機能,精神・心理機能を改善させるかどうかを明らかにすることを目的とした.</p><p>【方法】</p><p>大阪市にある3ヶ所の通所介護事業所を利用している要支援・要介護高齢者65名を対象とした.適格基準は,独歩が可能な者,除外基準は,中等度以上の認知機能障害のある者とした.適格基準を満たした者の内,65名(年齢79.3±5.9歳,男性13名,女性52名,要支援1~要介護2)をバディ介入群と対照群に置換ブロック無作為化を用いて群分けをした.参加者には,12週間の在宅運動プログラム用紙と運動記録カレンダーを配布し,理学療法士によって本人に合わせた運動を指導した.バディ介入群(n=33)は,週に1回,通所介護事業所で,バディ群の参加者同士で運動継続状況のモニタリング,フィードバック,情緒的サポートを受けるようにした.対照群(n=32)は,バディ介入を除いて同様のプログラムを行った.主要アウトカムは運動継続率とし,運動記録カレンダーを用いて評価した.これは1~4週(Phase1),5~8週(Phase2),9~12週(Phase3)に分け,自宅で運動を実施した項目が1つ以上ある日の割合として算出した.副次アウトカムはShort physical performance battery(4m歩行時間,5回立ち上がり時間,タンデム立位時間),握力,膝関節伸展筋力,質問票(運動自己効力感尺度,アパシースコア)を用いて評価した.統計解析では,群間効果について共分散分析を行い,群内効果にはFriedman検定,T検定,Wilcoxon符号順位検定を行った.なお有意水準は5%とした.効果量はd=0.2, f=0.1を小,d=0.5, f=0.25を中,d=0.8, f=0.4を大とした.</p><p>【結果】</p><p>運動継続率の群間効果ではPhase3で,介入群(96.4%)が対照群(78.6%)よりも有意に高値を示した.また効果量は大であった(f=0.4).群内効果では,対照群でPhase1(85.7%)と比較しPhase3(78.6%)で有意に低値を示した.身体機能,精神・心理機能に群間効果はみられなかった.群内効果では介入群で,ベースラインと比較して,12週間後に,膝関節伸展筋力(d=0.6),4m歩行時間(d=0.3),5回立ち上がり時間(d=0.5)が有意に改善した.対照群では,膝関節伸展筋力(d=0.8),4m歩行時間(d=0.4),5回立ち上がり時間(d=0.4),タンデム立位時間(d=0.4),アパシースコア(d=0.4)が有意に改善した.</p><p>【結論】</p><p>本研究の結果,12週間の在宅運動プログラムに障害高齢者同士のバディスタイル介入を加えることで運動継続率を維持でき,在宅での運動定着につながる可能性が示唆された.</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>参加者には本研究の目的や方法を書面および口頭にて十分に説明し,書面にて同意を得た.また,本研究は畿央大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(R1-30).</p>

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