MCI高齢者の体重減少と食欲低下との関連性

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>中年期における肥満は、認知機能低下や認知症との関連する一方で、認知症高齢者においては体重が減少することが報告されており、認知機能と体重との関連に一貫した結論は得られていない。認知症により体重減少が生じる1つの経路として、嗅覚や味覚の低下、及び意欲低下に関連して食欲が低下し、体重減少が生じると言われている。軽度認知障害(MCI)は認知的健常と認知症の移行期にあたり、認知症で生じる食欲低下や体重減少が早期にみられる可能性が考えられるが、それらの関連については明らかになっていない。「やせ」は低栄養の兆候であり、その後生じる健康問題を予防するためには、早期に介入する必要がある。そこで本研究の目的は、MCI高齢者と食欲低下、及び、やせの関連を明らかにすることとした。</p><p>【方法】</p><p>高齢者機能健診参加者のうち、神経疾患を有する者、日常生活非自立者、肥満者(BMI 25kg/m 2 )、MMSE24点未満の者、欠損値がある者を除外した6487名(男性2856名、平均73.8歳)を分析対象とした。MCI判定基準として、日常生活が自立しており、MMSEが24点以上で、客観的認知機能低下が認められた者とした。客観的認知機能は、記憶・注意・遂行機能・処理速度を測定し、年代・教育歴に応じた標準値より1.5SD以上の低下が認められた場合に認知機能低下とした。やせはBMIが18.5kg/m 2 未満であることと定義した。また、食欲はsimplified nutritional appetite questionnaire(SNAQ)で評価し、13点以下を食欲低下ありとした。目的変数に、やせ及び食欲低下、説明変数にMCIを投入したロジスティック回帰分析を行った。共変量は年齢、性別、教育歴、服薬数、慢性疾患、うつ傾向、喫煙歴、飲酒歴、身体不活動とした。また、MCIが食欲低下を介してBMIに影響を与えること検証するために、媒介分析Sobel testを実施した。有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】</p><p>6487名中1245名(19.2%)がMCIであった。多重ロジスティック回帰分析の結果、MCIであることが、やせ(OR=1.31、95%CI: 1.03‐1.65)、および食欲低下(OR=1.32, 95%CI: 1.13-1.56)とそれぞれ独立して関連していた。また、MCIとBMIの関連につて、SNAQを媒介因子とした媒介分析を行った。結果、MCIとBMIの関連に関して、総合効果は有意であり(effect = -0.173, 95%CI:-0.302‐-0.445)、関連があることが示された一方で、直接効果については有意な関連は認められたかった(effect = -0.121, 95%CI:-0.249‐0.008)。ただし、SNAQを介した間接効果は有意な関連を示していた(effect = -0.053, 95%CI:-0.073‐-0.035)。</p><p>【結論】</p><p>MCI高齢者において、体重減少および食欲低下との関連が認められた。MCI高齢者におけるやせは、食欲低下を介して生じることが示唆された。MCI段階においても、認知症高齢者で報告されている食欲低下が生じ、微小な体重減少が始まっている可能性が考えられ、今後更なる検証が必要である。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は、著者所属機関の倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い、対象者には本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明を行い、書面にて同意を得た上で本研究を実施した。</p>

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