高齢期における睡眠と身体活動低下の新規要介護発生との関連性

DOI
  • 中窪 翔
    国立長寿医療研究センター 予防老年学研究部
  • 土井 剛彦
    国立長寿医療研究センター 予防老年学研究部
  • 堤本 広大
    国立長寿医療研究センター 予防老年学研究部
  • 栗田 智史
    国立長寿医療研究センター 予防老年学研究部
  • 木内 悠人
    国立長寿医療研究センター 予防老年学研究部 鹿児島大学大学院保健学研究科
  • 西本 和平
    国立長寿医療研究センター 予防老年学研究部 信州大学大学院総合医理工学研究科
  • 島田 裕之
    国立長寿医療研究センター 予防老年学研究部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>高齢期において、身体活動は健康状態を維持、改善させる方法として重要な役割を担っており、高い身体活動量の維持が障害発生予防のために有用であることが示唆されている。一方で、睡眠は高齢期の機能維持において重要であり、長時間睡眠が要介護リスクと関連していることが明らかになっている。身体活動と睡眠は相互に影響し合うため、長時間睡眠および身体活動低下が、新規要介護発生に対しどのような関連性を有しているのかを明らかにすることを本研究の目的とした。</p><p>【方法】</p><p>高齢者機能健診National Center for Geriatrics and Gerontology‐Study of Geriatric Syndromesに参加した70歳以上の地域在住高齢者5,257名のうち、ベースライン時点において脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病の現病・既往のある者、基本的ADL非自立者および要介護認定を受けている者、Mini Mental State Examination(MMSE)が20点未満の者、欠損値がある者を除外した4,372名(女性2,343名、平均75.9±4.2歳)を本研究の分析対象とした。就寝時間と起床時間より睡眠時間を算出し、9時間以上を長時間睡眠とした。身体活動はInternational Physical Activity Questionnaire‐Short Formを用いてカテゴリ化し、High、Moderate、LowのうちLowに該当した者を身体活動低下と定義した。長時間睡眠および身体活動低下を独立変数、新規要介護(要支援および要介護)の発生(ベースラインより5年間の介護認定情報を追跡)を従属変数としたCox比例ハザード分析を実施した。また、長時間睡眠と身体活動低下の各要因の有無により分類した4群を、同様に独立変数に投入した分析も実施した。共変量は年齢、性別、教育歴、服薬数、BMI、うつ症状、歩行速度、MMSE、喫煙歴、飲酒歴、慢性疾患とした。また、2要因の交互作用による相加効果を検証するために、Relative excess risk due to interaction(RERI)を算出した。有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】</p><p>5年間の追跡期間において、878名(20.1%)が新規要介護認定を受けた。Cox比例ハザード分析の結果、長時間睡眠(HR=1.31、95%CI:1.03‐1.65)、身体活動低下(HR=1.32、95%CI: 1.13-1.56)はそれぞれ独立して有意にリスクが増加した。さらに、2要因をもとに4 群に分類した結果、長時間睡眠および身体活動低下のいずれも該当しない者を参照すると、長時間睡眠のみ(HR=1.32、95%CI: 1.01‐1.73)、身体活動低下のみ(HR=1.33、95%CI: 1.12-1.58)、長時間睡眠かつ身体活動低下(HR=1.69、95%CI: 1.11‐2.58)のいずれも有意にリスクが増加した。RERIは0.04でありわずかな相加効果であった。</p><p>【結論】</p><p>長時間睡眠および身体活動低下は、それぞれ独立して新規要介護発生と関連し、その相加効果はわずかであることが示された。介護予防を目指すための理学療法的介入を講じる上で、身体活動と睡眠状況の把握、改善の重要性を示すと考えられた。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は、著者所属機関の倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い、対象者には本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明を行い、書面にて同意を得た上で本研究を実施した。</p>

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