慢性期の片麻痺者および四肢麻痺者における歩行の活動量の特性の検証

DOI
  • 森田 智之
    神奈川リハビリテーション病院理学療法科 神奈川リハビリテーション病院研究部
  • 横山 修
    神奈川リハビリテーション病院リハビリテーション科
  • 立花 佳枝
    横浜市立大学附属病院リハビリテーション科
  • 内山 陽彦
    神奈川リハビリテーション病院理学療法科
  • 村田 知之
    神奈川リハビリテーション病院研究部
  • 松田 健太
    神奈川リハビリテーション病院リハビリテーション工学科

抄録

<p>【はじめに】</p><p>障がい者の健康増進のためには運動量の確保が重要である。障がい者の歩行の活動量についてはこれまでにも報告があるが、市販の活動量計を用いての報告は少ない。今回の目的は、呼吸代謝計測装置と市販の活動量計を用いて、片麻痺者と四肢麻痺者の歩行の活動量を特定することと、市販の活動量計が示す活動量を呼吸代謝計測装置の値と比較することである。</p><p>【対象・方法】</p><p>対象は慢性期の片麻痺者と四肢麻痺者各1名である。片麻痺者は58歳男性、ブルンストロームステージはII/II/IV(上肢/手指/下肢)、四肢麻痺者は70歳男性、損傷レベルはC5、ASIA impairment scale は Dだった。使用機器は呼吸代謝計測装置(COSMED SRL社製K5)と活動量計(オムロン社製ActiveStylePro HJA-750)だった。歩行距離は歩行用距離測定器、歩数は数取器で計測した。計測は安静臥位15分、安静座位5分、歩行6分、安静座位5分とした。背臥位での安静臥位後、背もたれつきの椅子で安静座位、その後歩行し最後に安静座位をとった。歩行速度は自覚的に快適な速度とした。解析対象は安静臥位は計測開始10分から15分の5分間、安静座位は2分から3分の1分間、歩行は3分から4分の1分間とした。解析データは呼吸代謝計測装置、活動量計ともMETsとした。</p><p>【結果】</p><p>片麻痺者の6分間の歩行距離は194m、平均速度は0.54m/s(1.9km/h)、歩数は449歩、歩行率は1.25歩/sだった。呼吸代謝計測装置の計測結果は、安静臥位が1.0±0.2METs、歩行前の安静座位が1.1±0.2METs、歩行が3.7±0.2METs、歩行後の安静座位が1.2±0.1METsだった。活動量計では歩行が2.2±0.1METsだった。歩行のMETsは計測器間で有意差があった。四肢麻痺者の6分間の歩行距離は239m、平均速度は0.66m/s(2.4km/h)、歩数は564歩、歩行率は1.57歩/sだった。呼吸代謝計測装置の計測結果は、安静臥位が0.8±0.1METs、歩行前の安静座位が1.0±0.3METs、歩行が3.0±0.8METs、歩行後の安静座位が1.2±0.7METsだった。活動量計では歩行が2.2±0.1METsだった。歩行のMETsは計測器間で有意差があった。</p><p>【考察】</p><p>安静臥位および安静座位は健常者の基準値(1.3METs)とほぼ同等だった。片麻痺者の歩行の活動量は、健常者の平地歩行での4.5km/h(3.5METs)に相当し、歩行速度は同年代の1.2m/sの5割程度だった。四肢麻痺者の歩行では、健常者の平地歩行での5.0km/h(3.5METs)に相当し、歩行速度は同年代の1.0m/sの6割程度であった。これらは快適歩行では健常者より速度は遅いが同等の身体活動が確保できることを示唆した。呼吸代謝計測装置と活動量計では歩行時の値が有意に異なったことから、障害がある場合は市販の活動量計では値が低めに示されることを示唆した。</p><p>【結論】</p><p>片麻痺者、四肢麻痺者とも自覚的に快適な歩行は健常者の歩行と同程度の活動量を示す可能性があることを示唆した。市販の活動量計の示す歩行の活動量は、呼吸代謝計測装置より低値を示した。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は当院倫理委員会の承認を得た(承認番号krh-2020-13)。対象者へ研究の目的、方法および発表する旨について説明し、同意を得た。</p>

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