小学校における運動器の検査を主題とした健康教育の取り組み

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>近年、学校保健安全法の一部改正に伴う運動器検診の実施や、子どもロコモなど子どもの運動器に関する検査や指導が実施されている。また、健康教育においてはヘルスリテラシーを高め、健康行動を実践できるよう学習や環境に対する援助が必要である。今回、運動器に関する検査を実施しながら、身体について理解を深めることを目的とした授業を児童および教員に対し実施した。また、授業参観の予定が新型コロナウイルス感染症拡大予防により保護者の参加が困難となったため、授業内容をまとめた小冊子を作成し授業後に児童を通じて保護者へ授業内容を伝達する形で実践したため報告する。</p><p>【方法】</p><p>対象は小学5年生12名、授業は小学校体育館において45分間で実施した。理学療法士2名と担任教員1名の計3名で児童4名のグループ毎に運動器検査を実施した。検査項目は、①立位体前屈(指先が床につくか)、②上肢挙上(180°可能か)、③手関節背屈(70°可能か)、④片脚立位(開眼で30秒可能か)、⑤しゃがみ込み(後方へ倒れず可能か)とした。検査の合間では模型を利用した前屈の動きの説明や児童のタブレットを用いたポーズ撮影、大きさの違う椅子での姿勢観察などとともに、ケンケンでの風船飛ばし、モノマネだるまさんがころんだでのバランス運動なども実施した。授業終了時に事前に作成していた小冊子を児童へ提供し、自宅で保護者へ授業内容を伝達するよう促した。</p><p>【結果】</p><p>運動器検査の結果は、①立位体前屈:できる10名、できない2名、②上肢挙上:できる12名、できない0名、③手関節背屈:できる12名、できない0名、④片脚立位:できる12名、できない0名、⑤しゃがみ込み:できる12名、できない0名であった。授業後の感想文では「股関節から曲げた方がグイグイと曲がりました」「風船が楽しかった」「お父さんやお母さんに冊子を見せた」「家族で体操してみたい」といった意見が書かれていた。授業の終わりに担任教員よりオスグッド病で膝に痛みのある児童の相談もあり、小冊子を参照しストレッチを説明した。当該児童の感想文では「バレーの練習がすごく楽になりました」と書かれていた。</p><p>【結論】</p><p>児童の個別性を意識し、運動器検査を主題とした授業を実施した。多くの児童で運動器の問題は認めず、担任教員からは「以前の授業に参加し体つくりの重要性を感じていたため、クラスで1年間柔軟体操や運動に取り組んできた賜物です」との感想が聞かれた。一方で、個別には柔軟性の低下やオスグッド病を抱える児童もおり、具体的対処法の助言が予防活動に繋がるのではないかと思われた。今回の授業では、運動器検査は児童への直接的なハイリスクアプローチとなるとともに、検査に関する説明や小冊子による身体への理解が教員・保護者への能力付与となることで間接的なポピュレーションアプローチにも繋がると思われた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>授業依頼を頂いた教員及び学校長へ口頭、書面にて報告し、検査結果を扱い発表を行うことに承諾を得ている。</p>

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