新人看護師を対象とした職業性腰痛予防の取り組み報告

DOI
  • 加藤 芳司
    社会医療法人宏潤会 大同病院 名古屋平成看護医療専門学校 理学療法学科 NPO 法人 アクティブエイジング研究会
  • 森 秀人
    社会医療法人宏潤会 大同病院
  • 古田 博之
    社会医療法人宏潤会 大同病院

抄録

<p>【はじめに】</p><p>医療,福祉従事者における腰痛問題は労働衛生上,常に上位を占める課題であるとともに,未就業の若年者の中にも腰痛の訴えを散見する事が稀ではない。医療,福祉に従事しようとする者の健康状態把握も職業性腰痛予防の観点で必要かもしれない。</p><p>今回,産業理学療法の視点による職業性腰痛予防の取り組みとして,新人看護師を対象とした腰痛予防の取り組みとアンケート調査を行った。</p><p>【方法】</p><p>所属先法人において新人看護師を対象とした職業性腰痛予防教室を理学療法士指導のもと開催した。参加人数は新年度新人看護師57名であり,内容は日本理学療法士学会産業理学療法部門主催「職業性腰痛予防講師育成講習会」の資料を参考に移乗動作を中心とした実技講習会を行った。</p><p>対象者には講習内容に関する項目とともに,年齢,腰痛の有無,既往(a看護学校入学前,b在学中),腰痛が出現する姿勢,動作(a持ち上げ時,b中腰,cひねり動作,dかがみ動作,e運搬,f転倒,転落,gバランスを崩した時,h物を手元に引く,iその他)のアンケート調査を行なった。</p><p>【結果】</p><p>アンケート回収率は47.4%(27名,男性3名,女性24名),平均年齢22.6歳であった。講習内容は業務に活かすことができるとの回答が100%となり,概ね満足であったとのコメントが多数を占めた。</p><p>回答者29.6%に看護業務就業前の時点で腰痛を有していた。内,看護学校入学前から,学校入学後の発症がそれぞれ50%であった。今後の看護業務就業にあたり,腰痛への不安の有無については62.5% が不安との回答であった。腰痛を誘発する姿勢動作では,かがみ動作,物の持ち上げ時,中腰の3動作で50%を占め,次いで長時間の立位と座位姿勢が「その他」として28.6%を占めた。腰痛予防に対する自己対策方法は,「負担のない動作を心がける」が54.5%を占めた。また,腰痛予防に関する情報提供や学ぶ機会があれば今後も参加したいかの問い対して「参加希望」, 40.7%「どちらでもない」, 59.3%の結果であった。</p><p>【総括】</p><p>学生時代から腰痛を持病とする者が一定数存在することが確認できた。看護職の腰痛予防に関して,入職後の取り組み報告は多く散見される中,経験年数が少ない職員による腰痛発生との関係も踏まえ,入職直後の健康状態の確認も重要であると思われた。先行報告では看護職の退職理由に健康理由は上位にはないが,職業性腰痛から引き起こされるメンタル不調との関係性を考えると退職理由の遠因である可能性は否定しがたい。</p><p>産業理学療法の技術を腰痛に悩む多くの従事者の健康維持に提供する事が求められる。今後も腰痛予防に向けた取り組みを進めて行きたい。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>対象者には講習内容およびアンケート調査結果を研究発表として報告する旨を説明し,発表の際に個人名が特定されることがないことを説明し,同意を得た。</p>

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