当院における大腿骨近位部骨折術後患者の栄養状態と退院時ADL及び在院日数の検証

DOI
  • 村尾 西風
    山鹿温泉リハビリテーション病院 総合リハビリテーション部
  • 佐藤 亮
    山鹿温泉リハビリテーション病院 総合リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに】</p><p>2040年問題が危惧される本邦において「高齢者の高齢化」が進み、大腿骨近位部骨折患者は増加の一途を辿っている。骨折後のリハビリテーションにより病前のADLまで回復する症例がいる一方で、低栄養が回復を阻害している可能性を説く報告が散見される。当院においても大腿骨近位部骨折へのリハビリテーションを展開しているが、それらの報告の対象者と比べ年々患者は高齢化してきており日本老年学会が提言している「超高齢者」も多い。今回、高齢者の中でも高齢層を対象とし栄養とリハビリテーション効果について検証する。</p><p>【方法】</p><p>対象は当院回復期病棟において令和3年3月1日~令和4年2月28日に入院された大腿骨近位部骨折術後患者の中から、80歳未満、脳血管疾患や視覚障害等のADLに影響を与える疾患を有する症例を除外した29名(男性6名・女性23名)とした。対象を血清アルブミン(以下、Alb)値にて非低栄養群(Alb>3.5g/dL)、低栄養群(Alb≦3.5g/dL)の2群に分けた。調査項目としては、在院日数と退院時の機能的自立度評価表(FIM)の運動項目としMann-Whitney U検定を用いて比較し、有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】</p><p>対象者29名(90.7±5.6歳)、うち超高齢者は17名(94.5±3.8歳)だった。非低栄養群は9名(85.8±4.0歳)、低栄養群は20名(93.0±4.7歳)、Alb値4.0g/dL以上は0名であった。退院時の運動FIMは、非低栄養群87±5点、低栄養群73.5±19点であり、非低栄養群の点数が高く有意差を認めた(P<0.05)。在院日数は非低栄養群88±22日、低栄養群88±3日であり有意差を認めなかった(P>0.05)。超高齢者17名の内訳は非低栄養群2名、低栄養群15名であり、非低栄養群において運動FIMが高く在院日数が短い傾向となった。</p><p>【結論】</p><p>本研究では低栄養群の方が退院時運動FIMは低値で有意差がみられた。在院日数に関しては、有意差は認めなかった。四戸らは独居の症例は在院日数が長くなると報告している。退院後独居であった患者は非低栄養群にのみに属している傾向であった。そのため、自宅生活を継続する上で調整に期間を要したことが非低栄養群の在院日数を長くする傾向にした要因の一つと考える。そのため、栄養状態にかかわらず在院日数に関しては患者の身体状態だけでなく社会的要因も含めた総合的な評価が必要であると考える。</p><p>今回、検証に際して超高齢者のみの群間比較が困難であったため80歳以上を対象とした。交絡因子である年齢の影響を受けていることは否定できないが、超高齢者で非低栄養群であった2名は退院後の歩行は自立している。そのため、年齢に関わらず栄養状態を管理しながら理学療法アプローチを展開していく意義があると考える。今回の検証をもとに今後は社会的要因も含めたADLや在院日数を検証していきたいと考える。</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行った。また、データ収取・集計には個人が特定できないよう配慮して実施した。</p>

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