重症下肢虚血と糖尿病による足病変に対する再発予防の取り組み

DOI

抄録

<p>【症例紹介】</p><p>65歳男性.既往歴に小児麻痺と糖尿病があり,自宅内は杖歩行自立,屋外は車椅子移動介助であった.熱傷を契機に左母趾に壊死が出現し,重症下肢虚血の診断で入院となった.血行再建術を施行した後,左リスフラン切断術を施行した.</p><p>【評価結果と問題点】</p><p>糖尿病性神経障害による足底表在覚鈍麻,振動覚低下,アキレス腱反射消失を認めた.左下肢は切断創部に加えて踵部潰瘍が残存し,また,右下肢は小児麻痺による運動麻痺(Brunnstrom Recovery StageⅡ)と尖足変形を伴っていた.</p><p>自宅退院を希望しており,入院および術後の影響によるADLの低下を防ぐ必要があった.右下肢は機能低下があり,支持脚として重要である左下肢も切断創部と皮膚潰瘍が残存し,かつ糖尿病性神経障害を伴っていたことから,創傷治癒を配慮しつつ歩行練習の両立が重要であった.</p><p>【介入内容と結果】</p><p>創部の観察と洗浄を踏まえて着脱が容易であり,かつ全足底免荷が可能な膝下までの免荷歩行用装具であるRemovable cast walker 装具を選定し,早期から歩行練習を開始・継続した.その結果,入院前の歩行能力を維持しつつ,創傷治癒も良好であった.退院時には免荷歩行用装具を外すことが可能であったが,切断術後の足部アライメントの変化や糖尿病性神経障害により左足部の創傷部の再発リスクが考えられた.</p><p>Removable cast walker装具は確実な免荷が可能である一方,装具の重量や大きさを伴うため,退院後の装具の継続使用が不良となる場合がある.退院後も装具使用のアドヒアランス獲得のため,自宅生活でも継続できるように患者本人を交えて義肢装具士と連携し,創傷部や足部の形状に合わせた室内用フットウェアを新たに作製し使用した.その結果,退院後もフットウェアを継続使用することで足部創傷の再発なく経過した.</p><p>【結論】</p><p>足潰瘍の治療として,感染・虚血の治療と並んで創傷部の免荷が重要であるとされており,今回早期から膝下までの免荷歩行用装具使用下でのリハビリテーションにより創傷治癒を妨げることなく,歩行能力の再獲得に至った.足部切断術後や糖尿病の合併がある場合,創傷治癒後も創傷の再発リスクが高いため,退院後も装具の継続使用を考慮する必要があった.装具の治療効果は患者の装具使用のアドヒアランスが関与するため,創傷保護効果と自宅で容易に使用可能な装具を選定することで,退院後も足部創傷の再発なく経過した.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本発表は患者に発表内容や目的,匿名化について文書と口頭で説明を行い,書面にて同意を得た.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ