地域のサッカースクールとの協働による育成年代への取り組み
説明
<p>【はじめに、目的】</p><p>地域における理学療法士の役割は、社会制度に基づくものに限らず、多世代の健康増進やヘルスプロモーションにも及んでいる。高沢らの先行研究によると、若年者のスポーツ傷害は小学生から高校生へ年代が上がるにつれて、外傷よりも障害の割合が高く推移している。つまり、小児期から体作りを支援することは、長期的な障害予防の観点からも重要である。今回、地域のサッカースクールと協働にて、子どものコンディショニング事業を実施したので、介入前後での効果判定を踏まえて実践報告をまとめた。</p><p>【方法】</p><p>対象はサッカースクールに通う、小学校3-6年生の13名(3年生6名、4年生1名、5年生3名、6年生3名)。サッカーという競技特性を踏まえ、コーチ陣とスクールの目的を、「切り替え時に置いていかれないこと」と「ジャンプ含めて競り合ったときに負けないこと」とした。実施頻度は週1回、期間は、2022年1月から3月までの計10回とした。効果判定は、初回及び最終介入時に実施した。測定項目は、柔軟性評価(前屈、胸郭、足関節)、パフォーマンス(ランジ、パワーポジション、左右片足立位保持)、競技特性項目として、ジャンプ(両足1回、両足2回、左右片足)、反復横飛びを実施した。また、初回評価を実施後、ご家族との共通言語をつくるために、5分程度の動画を作成し、スクールの目的とサッカーにおける着目ポイントの説明を加えた。解析は、柔軟性評価とパフォーマンスは、クロス集計にて前後での変化の確認を行った。競技特性項目は、対応のあるt検定を実施した。統計処理はIBM社製SPSS Statistics.ver.28を使用し、有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>クロス集計結果では、足首の柔軟性(初回不可13名中、最終可6名)とパワーポジション(初回不可13名中、最終可7名)で介入効果が確認された。ジャンプ項目(単位:cm、mean±SD)は、両足1回が介入前:157.7±19.7、介入後:164.2±20.8、両足2回が介入前:324.5±35.6、介入後:332.5±35.1、右片足が介入前:137.6±16.8、介入後:147.8±22.4、左片足が介入前:135.2±20.3、介入後:146.6±21.8であった。反復横跳び(単位:回、mean±SD)は介入前:38.5±3.8、介入後:47.1±5.1であった。統計的有意差は、ジャンプ項目で両足1回(P=0.009、差の95%CI:1.98-11.48)、右片足(P=0.049、差の95%CI :0.05-20.47)、左片足(P=0.001、差の95%CI :5.35-17.41)、及び反復横跳び(P=0.000、差の95%CI :5.06-12.01)で確認された。</p><p>【結論】</p><p>最終評価にて、足首の柔軟性の改善と共に股関節の使い方に変化が生まれたことが、競技特性項目の数値的変化にも表れたと考えられる。ご家族からも、サッカーの練習含めて、「動きが早くなった」や「プレーで当たり負けなくなった」など、目的に準じたコメントもいただけた。今回、理学療法士がサッカー等の必要な要素を踏まえたうえでコーディネートを行うことにより、競技パフォーマンスが向上するとともに、怪我を含む予防への効果が望めることが示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>今回の評価結果の使用に関しては、ヘルシンキ宣言に基づき、協力は対象者の自由意志であること、対象者に不利益がないことなどを説明して同意を得た。また、本研究に際し、無記名にて行うことで、個人の特定が行われないよう努めた。なお、本研究における利益相反はない。</p>
収録刊行物
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- 日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
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日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 1.Suppl.No.2 (0), 96-96, 2022-12-01
日本予防理学療法学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390577829136994688
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- ISSN
- 27587983
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可