日本における産業理学療法の現状についての調査報告 -腰痛に関する調査-

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Abstract

<p>【はじめに、目的】</p><p>産業理学療法の発展のためには,他国の介入事例や技術だけでなく,普及を促進させる人口動態・文化・政治・理学療法士の地位等の外部要因が影響することが考えられ,それらの状況について,他国と日本の比較が重要である.本調査は,これらの把握を目的とした日本産業理学療法研究会の2021年度産業理学療法国際調査事業の一環で,日本における産業理学療法の現状として腰痛に着目し,調査した内容について報告する.</p><p>【方法】</p><p>調査方法は,インターネットを用いて検索し,厚生労働省の電子ベータベースを用いて,調査を行った.検索式は,「転倒災害」,「労働災害」,「腰痛予防」,「産業保健」,「産業理学療法」とした.</p><p>【結果】</p><p>我が国の総人口(2021年9月推計)は,前年に比べ,51万人減少している一方,65歳以上の高齢人口は,3460万人と,前年に比べ,22万人増加し,過去最多となった.今後の人口の変化を踏まえると,就業者数の減少は不可避と考えられており,女性や高齢者の労働参加が不可欠で,労働力確保が重要と考えられる.しかし,現在産業保健分野で,産業医,歯科医師,看護師,衛生管理者などと連携し,活動を広げている理学療法士は存在しているが,病院に勤務しつつ,多くの人の健康問題や職場環境改善に対する指導ができる環境にある理学療法士は,極めて稀である.労働安全衛生法の中で,産業医と衛生管理者は,明記されているが,理学療法士は明記されておらず,この分野での理学療法士に何ができるのかが認知されていない.また,産業理学療法の発展については,他国の理学療法士と比較して,日本は理学療法士へのダイレクトアクセスができないことも理由の一つとして考えられる.</p><p>厚生労働省では,休業4日以上の死傷災害のうち最も件数が多い転倒災害の減少を図るため,2015年から「STOP! 転倒災害プロジェクト」を実施している.また,職場における腰痛は,労働災害の6 割が腰痛による原因であることや,介護や看護など社会福祉施設をはじめとする保健衛生産業では,最近の10年間で腰痛発生件数が2.7倍にも増加していることから,腰痛の予防対策として,「職場における腰痛予防対策指針」(2013)を改訂し,労働者の健康保持増進に努めている.2021年には労働災害が増加傾向にある業界団体への協力要請を行い,さらなる周知と啓発を行い,労働者の健康管理に関する対策が整備されている.</p><p>【結論】</p><p>日本における産業保健分野の現状は,厚生労働省による周知や啓発を行っているが,産業保健分野の専門職と活動したことのある理学療法士が少ない.そのためにも,産業保健分野での介入成果を報告することや労働者や専門職に,理学療法士の認知度を調査する必要があると考える.今後は,さらなる産業保健分野に向けた発信が重要と考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本調査は,日本産業理学療法研究会の2021年度産業理学療法国際調査事業の一環で実施した.電子ベータベースを用いた,調査であるが,ヘルシンキ宣言に基づき実施し,情報収集の際,内容が損なわれないように十分配慮した.開示すべきCOIはありません.</p>

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