小規模地域在住高齢者の呼吸と健康パラメータの関係

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>高齢者の呼吸機能低下は生活の質をはじめ,身体機能の低下とともにフレイルやうつ傾向,死亡率上昇との関連が多く報告されており,高齢者の呼吸機能低下の早期発見は生活機能が低下する前の予防に重要である.また,呼吸機能低下は,運動耐久性を低下させ,廃用症候群や肺炎のリスクを増大することも周知の通りである.しかし,いわゆる地域で暮らす健常高齢者は呼吸の症状が現れる前に気付きにくく,検査するには大規模の集団検診や医療機関での診察を受ける必要がある.このため,早期発見と早期予防するために簡単な検査手段が必要と考える.小規模地域に在住する高齢者の呼吸機能に関連する健康のパラメータを検出し,呼吸機能低下の早期予防から地域高齢者の健康寿命に寄与することが本研究の目的である.</p><p>【方法】</p><p>兵庫県神戸市の小規模住宅が集中する地域に在住する高齢者を対象とした.本研究は筆者が地域講演会を開く際,本研究に同意した14名(女性8名,男性6名)の高齢者に対し呼吸機能検査は電子式診断用スパイロメータ(ミナト医科学社オートスパイロ307)を使用し,努力性肺活量,一秒量(FEV1.0),一秒率(FEV1.0%)を算出した.健康パラメータは握力,下腿周径,唾液空嚥下テスト,簡易栄養状態評価表(MNA-SF)と聖隷式嚥下質問紙の関係を調査した.呼吸機能と握力,下腿周径,摂食嚥下機能と栄養状態の関係を多変量相関の処理をした.なお,本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施され,対象者全員には研究内容を十分説明し,調査対象の同意を得た.</p><p>【結果】</p><p>年齢,性別,体脂肪指数(BMI)で調整しても,努力性肺活量は利き手握力,非利き手握力のいずれにも有意な正の相関が認められたが,他のパラメータとの有意な差はなかった.</p><p>【結論】</p><p>小規模地域に在住する高齢者14名を対象に,呼吸と健康パラメータに関するスクリーニングテストを行った結果,握力が呼吸器機能との関係性が示された.握力と呼吸筋力はともに随意努力が必要であり,握力測定も腹圧のコントロールが不可欠である.今回,両手とも握力が呼吸機能との相関性を示されたことは,仮に片麻痺やリウマチなどの障害があっても,片手の握力のみで,呼吸機能をスクリーニングできる可能性を示唆したことは意味があると考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施され,対象者全員には研究内容を十分説明し,調査の対象になると共に,研究内容の公開についても同意を得た.また,本研究は個々人が特定されないよう努めている.</p>

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