活動報告:療法士と医師の共同によるオンラインでの疼痛ケアの試み

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抄録

<p>【はじめに】</p><p>多職種連携で、療法士が医師と協働する際、学んできた専門領域が異なるという背景がある。また評価・診察技法も異なり、療法士が同定した発痛源と医師が同定する組織が異なり、互いに議論することで治療成績が向上することをしばしば経験する。国民の多くは腰痛、肩こりを感じており、その疼痛改善の新しい手法としてFasciaへの治療が期待されている。Fasciaとは線維性の立体網目組織で、その治療には注射、徒手療法、皮膚刺激ツールなどが用いられてきた。平成30年厚生労働省はオンライン診療の適切な実施に関する指針を発表した。さらにコロナ禍による在宅ワークなどの普及により急速にオンラインを利用した取り組みが増えてきた。我々は、研修系形式でFasciaを共通言語にオンラインでの発痛源の見立て、治療介入を徒手療法、C触覚繊維を刺激して疼痛軽減に有効な一般医療機器非能動型接触鍼「ソマセプトミオ®」(東洋レヂン社製)を用い、試みた。</p><p>【方法】</p><p>オンライン会議システムzoomを用いてFasciaの治療・評価方法に関して共通言語を有する医師1名、理学療法士2名が参加した。実際に患者を診療した医師が現在の問題点を述べ、それに対して理学療法士2名が機能解剖学的観点からオンラインで問診及び関節可動域評価を実施した。Fasciaの触診、徒手療法、ソマセプトミオ®の貼付は医師が行った。</p><p>症例1:30代女性胸郭出口症候群疑い主症状:スマホ利用時の左手~前腕尺側、上腕後面のしびれ</p><p>症例2:40代女性胸膜炎後の胸部痛、背部痛主症状:呼吸時の胸部痛</p><p>【結果】</p><p>症例1:胸郭出口症候群の原因部位の小胸筋、鎖骨下筋、中斜角筋に異常なFasciaがある可能性が示唆された。小胸筋、鎖骨下筋、中斜角筋への皮膚刺激ツール貼付にてその場で関節可動域が改善したが、主症状であるしびれははじめより「楽」ではあるが改善しなかった。再評価として中斜角筋の第1肋骨付着部を圧迫すると圧痛と共に主症状の再現(関連痛)が認められた。同部位への皮膚刺激ツール貼付では主症状の改善は認められず、Fasciaハイドロリリースなどの処置が必要な可能性があると考えられた。</p><p>症例2:呼吸にかかわる筋である僧帽筋、前中斜角筋、鎖骨下筋、胸肋関節、腹直筋に異常なFasciaがある可能性が示唆された。今後の方針として、理学療法士と医師が共同しての肩甲体挙上が改善するように斜角筋・鎖骨下筋、胸骨周りへのFasciaリリース、腹直筋Fasciaリリース後、腰方形筋の起始部~横隔膜~大腰筋のFasciaリリースが必要と考えられた。</p><p>【総括】</p><p>本活動によって、以下の知見が得られた。</p><p>①初見でも、問診、関節可動域評価はオンライン画面上で可能で ある。</p><p>②Fasciaを共通言語として、療法士と医師が協働することで、オンラインにおいて適切な発痛源の見立てが可能である。</p><p>③一般医療機器非能動型接触鍼はオンラインでの評価において適切な部位に貼付することで、痛み・痺れと関節可動域制限の改善に寄与する。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は患者に研究内容を十分説明し,対象になることについて同意を得た。</p>

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