性に関する研究成果の,社会への適切な発信を考える

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<p>本シンポジウムは,性(セックス・ジェンダー)に関する研究成果の,社会に向けての適切な発信について考えるものである。自然科学であれ人文社会科学であれ,そもそも研究自体にジェンダー・バイアスがある。ただしここでは性に関して,信頼できる成果や知見を出すことの困難さや,学問の成果が社会に発信される際の誤用による様々な弊害や,それらへの対応策などについて議論する。</p><p>最初に平石界氏から,配偶者選好の性差にかんする進化心理学の知見の再現性の問題などを例に引きつつ,心理学の研究成果がどこまで実社会の人間に適用可能なのか「証拠の階層」(evidence level)を整備する必要について話題提供して頂く。</p><p>次に,認知神経科学者で,いわゆる「男性脳・女性脳」の俗説が差別を助長する問題などについて情報発信されている四本裕子氏から,因果関係も一方向ではなく断言する科学的根拠がない中で,構造的差別を強化する方向に言説が広げられるパブリケーションバイアスの実例を挙げて頂く。そして,それによる弊害,さらには解決策を提案して頂く。</p><p>最後に,社会心理学がご専門の池上知子氏からは,研究成果がステレオタイプ化して流布し,その結果ジェンダー不平等が生じた場合に,それを容認,正当化してしまう心理的メカニズムがあることや,不平等解消を実現するための前提条件となるジェンダー意識,社会制度などについてお話し頂く。</p><p>指定討論者は共催のギースの会長の吉原雅子氏にお願いする。心理学領域で提供された話題について,哲学の観点からご意見を述べて頂き,性に関する研究成果を社会へ適切に発信する方策についての議論の口火を切って頂く。</p>

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