心理統計教育の標準カリキュラム・シラバスはいかにあるべきか「ベシスタ」シラバスを叩き台とする検討

抄録

<p>学問の世界は日進月歩。私たちは研究者として教育者として,常に知識を更新する必要があります。心理統計という私たちの「道具」にしても同じことです。例えば50年前,25年前,そして今の『心理学研究』誌を手に取って(J-STAGEにアクセスして),ご自身の専門に近いテーマの論文を読んでみてください。用いられている手法も,あるいはその時何が常識とされていたかも,大きく変化していることに気づくでしょう。</p><p>中堅・ベテランの方々は「心理統計の専門家でもないのに,道具の発達に追いつくのはしんどい」と,若手の方々は「最新の情報を知っていればよく,基礎に目を向ける暇などない」とおっしゃるかもしれません。わかります。しかし,この状況を放置すると,やがて論文が読めなくなり,論文が書けなくなり,研究ができなくなります。そして,論文を読む教育が,書く教育が,そして研究指導ができなくなります。</p><p>私たちは,私たちが研究者として教育者として,常に知識を更新できるような環境を整えられないか,と考えました。そして,そのためにそれぞれがバラバラに努力するのではなく,それを結集するべく心理学会として頑張ってみよう,という結論に至り,2021年8月に本委員会が発足しました。</p><p>本シンポジウムでは,こうした意図を心理統計教育の現状をふまえてご説明した上で,私たちが構想しているカリキュラムの構造についてご紹介します。論文を読めるようになる「Basic Statistics(ベシスタ)」,論文を書けるようになる「Standard Statistics(スタスタ)」,さらに発展的な手法を身につける「Advanced Statistics(アドスタ)」の3層構造で,知識を広げていくというよりは下地から本塗り,そしてつや出しへと塗り重ねていくという発想です。まず手始めに作成したベシスタのシラバス案をお示しして,皆様と議論したいと考えています。既に資料を公開し,パブリックコメントを募集しておりますので(https://sites.google.com/view/jpa-psychometrics/),是非ともお目通しの上,当日はもちろん,事前にもご意見賜れれば幸いです。</p><p>心理統計あるいはその教育に現に携わっていようがいまいが,ああこれは「じぶんごと」だな,と捉えてくださった方々のご参加を心よりお待ちしております。</p>

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