接触場面のナラティブにおける母語話者の調整行動 : 中国人日本語中級学習者との協働構築に向けて

書誌事項

タイトル別名
  • Adjustments by a Native Speaker during a Narrative in a Contact Situation : Collaborative Construction with Chinese Intermediate Learners of Japanese

この論文をさがす

説明

本研究は,接触場面において,日本語母語話者が中国人学習者(中級レベル)に自身のナラティブを理解して参加させるために行った調整行動に焦点を当て,母語話者と学習者がどのようにナラティブを協働構築しているのかを探ることを目的とする。 会話データは,母語話者J1が語り手として学習者3人(C1, C2, C3)に語る中国留学中の苦労話を録画・文字化したものである。この苦労話のナラティブの各構成要素(導入部,方向付け部,展開部,結果部,終結部,評価)とナラティブの中で展開される話題において,母語話者J1が語り手としてどのような調整行動を行い,学習者が受け手としてどのような言語・非言語行動を行っているのかを分析した。 分析の結果,学習者の日本語の理解力不足のため,母語話者の長いナラティブを理解して十分に参加することが難しく,ナラティブの方向づけ部や結果部の途中で,自身の類似体験を語る話題に転換し,ナラティブを中断してしまう様子が見られた。しかし,母語話者がそのナラティブの中断を受け入れ,その後,自身のナラティブを分割しながら語っていた。そして,このナラティブの分割の際,J1は,特に,語り手として話題の展開を管理する,学習者に理解する時間を与える,学習者に自身のことを話させたりする等の調整行動を行っていることが分かった。 これをもとに,ナラティブの語り手の母語話者による調整行動が重要である点を主張した。さらに,学習者もナラティブの受け手になる際に,ナラティブの構成要素を知り,語り手の話を理解しつつ,共感や理解を示すことによって,ナラティブの展開を促す必要があること,および,ナラティブの終結部でナラティブと関連する感想・意見を述べることの重要性を指摘した。

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ