タイとネパールに生息するアッサムモンキーの高い樹上性について

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  • Arboreality of <i>Macaca assamensis</i> in Thailand and Nepal

抄録

<p>霊長類を理解するには彼らの樹上生活への適応戦略を生態や形態面から研究することが重要となる。だが、樹上性の程度は種や生息環境によって様々であり、比較できる基礎的データが必須である。そこでアッサムモンキー(Macaca assamensis)が樹上にいる割合を2ヶ所の調査地で調べた。タイ北部ピサヌロークのTham Pha Tha Phon (TPTP) Non-Hunting area(北緯16°30’、東経100°39’、標高54m)では2023年に10頭からなるAO群のヒガシアッサムモンキー(M. a. assamensis)を対象に、ネパール中央部カトマンズのShivapuri Nagarjun National Park(SNNP)(北緯27°44’、東経85°17’、標高1,300m)では2014年に52頭からなるAA群のニシアッサムモンキー(M. a. pelops)を対象に、15分間隔のスキャンサンプリングを行って発見個体の性年齢、活動、樹上にいたか地上にいたかを記録した。その結果、ヒガシアッサムモンキーが樹上にいた割合[(樹上にいた回数)/(樹上にいた回数+地上にいた回数)×100]は85.6%であり、ニシアッサムモンキーが樹上にいた割合は70.8%だった。両地域とも、人々が放置するなどした地上の食物を食べることがあったにも拘らず、マカク属の他種と比べて、アッサムモンキーは高い樹上性を示した。樹上にいた割合は、ヒガシアッサムモンキーではオスが81.1%でメスが84.0%、ニシアッサムモンキーではオスが76.6%でメスが67.6%であり、両地域ともオスメス間に有意な差はなかった。霊長類の樹上性には捕食圧、食物資源の分布、他群を見張る必要性等が影響している可能性がある。SNNPではヒョウ(Panthera pardus)の生息が、高い樹上性に影響していると思われる。しかし、同地域に生息するアカゲザル(M. mulatta)の樹上性は高くないので、生息地の捕食圧だけではアッサムモンキーの高い樹上性は説明しきれない。アッサムモンキーがどのような環境で進化してきたのかを解明することが重要であろう。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390578371119420288
  • DOI
    10.14907/primate.39.0_43_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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