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- 神川 龍馬
- 京都大学大学院農学研究科
書誌事項
- タイトル別名
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- Diversity of Eukaryotes
- Phylogenomics, Mitochondria, and Plastids
- 系統ゲノミクス,ミトコンドリア,色素体から
説明
<p>真核生物とは,我々ヒトのように,細胞内に核と呼ばれる膜で囲まれたDNAを含む構造が存在する生物である.核にはDNAに加え,DNAが染色体構造を取るためのタンパク質や,遺伝子発現・複製に関わるタンパク質が局在している.さらに教科書的には,酸素依存的なATP合成に関わるミトコンドリアやタンパク質の修飾・濃縮・分泌に関わる小胞体やゴルジ体など,核以外にも多彩な膜で囲まれた構造が細胞内に存在する.一方で,このような膜で囲まれ,DNAが局在する構造である核やミトコンドリアが存在しない生物は原核生物と総称される.原核生物と真核生物は,すなわち上述のように細胞内構造から支持されるグループ分けである.このように,「なぜ分けるべきか」という理由を視覚的に極めて理解しやすいグループ分けが真核生物と原核生物である.しかし,この真核生物・原核生物という分け方は,現在受け入れられている進化の道筋には一致しない.原核生物は,系統樹上で真正細菌および古細菌と呼ばれるグループにさらに分けられ,それらは互いに細胞を構成する膜の脂質などに違いが見られる.近年,真核生物は古細菌の中でも特にアスガルド古細菌に最も近縁であり,真核生物は古細菌の多様性の中から誕生したことが分かってきた(図1)(1).後に真核生物の共通祖先につながる生物(FECA, first eukaryotic common ancestor: 図1灰色星印)が他の古細菌から分岐して以降,現存する全ての真核生物の最後の共通祖先(LECA, last eukaryotic common ancestor: 図1黒星印)に至るどこかのタイミングで,そしていずれかの順番で核,小胞体,ゴルジ体,ミトコンドリアが獲得されていった(2).LECAの誕生は15億年以上前と言われているが(3),この15億年の間に真核生物はどれほど多様化したのだろうか.本解説記事では真核生物の多様性について,「系統」,「色素体」,「ミトコンドリア」の3点から概説してみたい.</p>
収録刊行物
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- 化学と生物
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化学と生物 60 (8), 393-401, 2022-08-01
公益社団法人 日本農芸化学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390578437525830272
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- ISSN
- 18836852
- 0453073X
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可