電動モルセレーターを使用しない全腹腔鏡下子宮全摘出術の術後に発症したParasitic myomaと腟断端囊腫の治療経験

書誌事項

タイトル別名
  • A case of Parasitic myoma and vaginal stump cyst in a patient who underwent total laparoscopic hysterectomy without power morcellation
  • デンドウ モルセレーター オ シヨウ シナイ ゼン フククウキョウ カ シキュウ ゼン テキシュツジュツ ノ ジュツゴ ニ ハッショウ シタ Parasitic myoma ト チツダンタンノウ シュ ノ チリョウ ケイケン

この論文をさがす

抄録

子宮筋腫はまれに子宮から分離し他の臓器から栄養血管を得て生着しうることが知られており,Parasitic myomaと称される.医原性のものとしては腹腔鏡下手術における電動モルセレーターを使用した症例で多く報告されているが,今回,電動モルセレーターを使用しなかった腹腔鏡手術後に発症したParasitic myomaを経験した.症例は47歳未妊.4年前に子宮筋腫に対する全腹腔鏡下子宮摘出術(TLH)の既往がある.子宮はメスを用いて腹腔内で切開し腟から体外に搬出した.今回性器出血と水様性帯下を認めて他院を受診し,MRIで骨盤内に9×7×5 cmの筋腫様充実性腫瘤と腟断端に4×2 cmの囊胞状腫瘤を指摘された.当センターに紹介されて,Parasitic myomaの診断でGnRHa療法後に開腹下に摘出術を行った.回盲部裏側の上行結腸間膜に付着した栄養血管を有する5×4×2 cmの腫瘤を認めた.腹膜に覆われ,周囲との癒着は認めなかった.また腟断端に連続して3 cm大の囊腫を認め,内部には粘液貯留を認めた.病理組織診断ではそれぞれ平滑筋腫と肉芽様囊胞であった.Parasitic myomaは元々有茎性漿膜下筋腫が何らかの理由で子宮から脱落し,子宮以外の臓器に生着したものとして知られてきたが,近年腹腔鏡下手術での電動モルセレーター使用後の発症が多数報告されており,その発症頻度は0.12-0.95%と報告されている.一方で電動モルセレーター未使用の術後での発症は限られているが,開腹および腹腔鏡での子宮全摘出術,筋腫核出術,帝王切開術後などで報告されている.筋腫小片が腹腔内に残存する可能性があるという点では,電動モルセレーター以外で細切する場合にもParasitic myomaの発症の危険性は常にあると考え,腹腔内の洗浄と小片の回収を丁寧に行う,細切を回収袋の中で行うなどの工夫は考慮の余地がある.〔産婦の進歩75(3):291-300,2023(令和5年8月)〕

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ