<論説>初期瓦生産における王権の技術労働力編成

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タイトル別名
  • <Articles>The Organization of Technical Labour by Kingship in Early Roofing-Tile Production
  • 初期瓦生産における王権の技術労働力編成
  • ショキガワラ セイサン ニ オケル オウケン ノ ギジュツ ロウドウリョク ヘンセイ

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抄録

初期瓦生産に関する技術労働力編成については、文献史学では律令的で先駆的な文脈から、考古学ではミヤケ制や部民制といった古墳時代的な文脈から捉えられてきた。この相反する到達点の相違はこれまで相互に批判されることなく等閑視されてきた。そこで本論では、出土瓦の痕跡からミヤケや大王家発願寺院に動員された技術者の系譜関係を整理し、既往の学説について検証した。分析の結果、以下の四点が明らかになった。①ミヤケにおいて特定の集団が世襲的に技術を維持継承していた様相は認められず、部民制的な労働力編成は否定される。②大王家の家産機構に特定の技術は定着しておらず、瓦工は王権に隷属していなかった。③王権による初期の瓦生産は大王家、マエツキミ層、在地首長層のそれぞれ保有する複合的な要素から成り立っていた。④こうした古墳時代的な様相のなかにも律令期的な様相を見出すことができ、社会情勢を反映した過渡的な構造であったことが窺える。

収録刊行物

  • 史林

    史林 106 (2), 303-338, 2023-03-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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