それなりに整った世界で叫ぶ

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書誌事項

タイトル別名
  • Screaming in an Insufficiently Well-organized World
  • A Study of the Intensions of People with Severe Intellectual Disability Who Live Independently
  • 家と施設でない場所で暮らす、重度の知的障害のある人の意思をめぐって

抄録

<p>障害の社会モデルは、障害を個人の属性と捉え、その克服軽減を図る医学モデルを批判し、障害の社会的構築性に焦点をあてる。近年の批判的障害学は、社会モデルが前提とする身体と社会の二元論に頼らず、身体や物質に内在する変化や、身体・物質と精神・言説の混淆する関係の中で障害の問題を捉えることを目指す。文化人類学は障害を文化間比較から捉え、障害者政策、治療教育、障害者運動がはらむ西洋中心主義を批判してきた。それは一方で、福祉制度の整った西洋と整っていない非西洋という二分法を再生産する危険を持っている。また文化人類学や社会学におけるこれまでの障害研究は、身体障害を主たる対象としており、重度の知的障害を持った人に注目した研究はほとんどない。このような障害をめぐる議論の成果と課題を踏まえながら、本論文は「それなりに整った」という観点を導入し、福祉制度が整った社会と整っていない社会の二分法の乗り越えを図る。現代の日本において、自立生活を行う重度の知的障害のある人がほかの人と居合わせた空間に注目し、人と人、人とものの関係を、空間の外部にあって人びとの認識に影響を与える要素にも留意しながら、重度の知的障害のある人の意思が、ほかの人びとやものとのアッサンブラージュの中で表されていく過程を描く。そのうえで、共生概念を抽象的な規範ではなく、空間に埋め込まれたものとして提示する。</p>

収録刊行物

  • 文化人類学

    文化人類学 87 (4), 624-641, 2023-03-31

    日本文化人類学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390578603772119808
  • DOI
    10.14890/jjcanth.87.4_624
  • ISSN
    24240516
    13490648
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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