地域政党の勢力拡大とスケール戦略

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  • Expansion and scalar strategies of a regional party

抄録

<p>1. はじめに</p><p> 近年選挙地理学におけるスケール概念の重要性が高まっている.スケール論の観点から選挙政治を見た際に,地域政党の活動は注目に値する.諸外国では近年地方政党が国政に影響を与えるという現象が観察され,政治学で分析の対象となっている(砂原 2011).日本でも2010年代に入ってから地方選挙で複数の地域政党が台頭したことに注目が集まっており,特に大阪維新の会とそれを母体とする国政政党に関する研究が盛んである(例えば善教 2018, 2021).ただし,先行研究には政党が活動を行う基盤となる地理的スケール(国・都道府県・市区町村など)に関する議論が少ない,維新の会への支持がやや静態的に捉えられている,などの課題がある.本報告では維新の会がいつどこで,どのスケールの選挙で支持を得たのかを明らかにする.またそのような状況を生み出した維新の会のスケール戦略について検討する.</p><p>2. 研究対象</p><p> 研究対象は大阪維新の会と,それを母体とする一連の国政政党である.以下では対象とする政党の歴史について簡単に説明する.2010年4月,当時の大阪府知事・橋下徹を中心として地域政党「大阪維新の会」が誕生した.2012年9月に大阪維新の会を母体とする国政政党「日本維新の会」が結成され,11月には石原慎太郎が率いる太陽の党が合流した.2014年には結いの党との合流をめぐって石原と橋下が対立を深め,結果として石原派が離党した.橋下派は結いの党と合流し「維新の党」と名前を改めた.2015年には民主党との合流をめぐって当時の党首・松野頼久と橋下が対立した.橋下は維新の党を離脱し11月に「おおさか維新の会」を結成した.2016年8月に党名を現在の「日本維新の会」へと変更した.まとめると,橋下を中心とした国政政党は「日本維新の会→維新の党→おおさか維新の会(改名により日本維新の会)」という変遷をたどってきた.</p><p>3. 維新の会の勢力範囲の変化とスケール戦略</p><p> 国・都道府県・市区町村それぞれのスケールの選挙における維新の会の得票率や当選者数を見ると,選挙が行われた時期によって地域的な支持の構造が異なることがわかる.具体的には,維新の党が分裂する以前は,近畿圏を中心にしつつも東日本にも局所的に得票・議席が見られたにもかかわらず,党分裂後は近畿圏に得票が集中する構造へと変化している.これは党分裂によって国政政党が大阪のメンバーを中心とした政党となったことで,近畿圏以外での勢力が後退したものと考えられる.一方で,最近の選挙では再び全国的に得票・議席を獲得するようになっている.報告では,選挙結果のデータを詳細に紹介するとともに,近年の維新の会の地方組織の設立状況なども示し,維新の会のスケール戦略について議論を行う.具体的には,維新の会が地方政治から国政への進出を目指すにあたり,逆説的に地方議員の数を増やす必要に迫られていることを示す.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390579078735073920
  • DOI
    10.14866/ajg.2023a.0_143
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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