下水処理場排水流入の停止による河川水質の変化

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  • River water quality change due to termination of drainage inflow from sewage treatment plant

抄録

<p>Ⅰ はじめに</p><p>日本の河川の水質は、水質汚濁防止法などの法整備と下水道の整備により改善した。しかしながら、下水道により集められた汚水を処理する下水処理場からの排水は、河川の点源汚染となる可能性がある。下水処理場での汚水処理が不十分な場合、有機物や窒素、リンなどの栄養塩が河川に流入し、水中の酸素を消費することで、河川の生態系に影響を与えることが指摘されている。しかしながら、下水処理場からの排水の流入が止まった場合、河川の水質はどのように変化するか、また、どれくらいの時間を経て、影響が無くなった状態になるのかは明らかとなっていない。下水処理場排水の流入が停止した際に、河川水質にどのような変化が生じるかを調べるためには、下水処理場排水の流入があった時期と、それが無くなった時期の両期間で継続的に調査を行う必要がある。本研究では、東京都八王子市を流れる山田川を対象として、下水処理場排水の流入が停止する前後の期間のサンプルを用いて研究を行い、下水処理場排水が河川水質に与える影響と、それが無くなった際にどのような変化が生じるのかを明らかとすることを目的とする。</p><p>Ⅱ 研究方法</p><p>2020年6月~2021年9月にかけて月に1回の頻度で、北野下水処理場の排水の影響が見られた山田川最下流の地点(YM1:下中田橋)において河川水のサンプリングを実施し、現地で水温、電気伝導度、水素イオン濃度の計測を行った。また、北野下水処理場よりも上流の、処理場排水の影響が見られない地点(YM2:月見橋)において、2020年10月~2021年9月にかけて月に1回の頻度で同様の項目を計測し、下水処理場排水が流入することによる河川水質の影響について考察した。サンプリングした河川水はShimazu社製のイオンクロマトグラフィーを用いて主要溶存成分の分析を実施した。  なお、山田川に排水が流入していた北野下水処理場は2020年12月をもって操業を停止しており、現在は降雨時を除き山田川への排水の流入はみられない。</p><p>Ⅲ 結果と考察</p><p>山田川最下流の観測点であるYM1の平均ECは、下水処理場排水が流入していた2020年6月~12月の期間では、27.6mS/mであった。一方、排水の流入が停止したあとの期間である2021年1月~9月では、16.4mS/mであった。排水の流入の有無によりECの値に大きく差があることがわかる。下水処理場よりも上流の観測点のYM2の平均ECは2020年10月~12月は20.3mS/m、2021年1月~9月では19.5mS/mであり、それほど変化していないことから、山田川最下流部でのECの変化は下水処理場排水の流入が停止したことによるといえる。</p><p>Ⅳ おわりに</p><p>下水処理場排水の流入が停止する前後の期間の水質観測により、下水処理場排水の流入がなくなったことにより水質が改善されたことが明らかとなった。今後は、より詳しい主要溶存成分の分析などにより、下水処理場排水の流入により影響を受ける溶存成分の種類等を特定することや、どれくらいの期間で完全に水質が回復するのかを明らかにする必要がある。</p><p>参考文献</p><p>小田理人・小寺浩二(2022):多摩川水系浅川の水質に関する水文地理学的研究(4).日本地理学会発表要旨集,2022s(0),56.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390579078735087360
  • DOI
    10.14866/ajg.2023a.0_147
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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