分析化学・分子生物学的手法を用いた土壌資料からの土地利用の推定に関する研究(第1報)

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  • Estimation of land utilization from soil samples using analytical chemistry and molecular biological methods.

抄録

<p>土壌は犯罪捜査において人や物と事件現場を結ぶ証拠資料となる.当研究所ではこれまで科学的な知見に基づき,犯罪現場や被疑者から採取された土壌の分析を行ない,犯罪捜査に活用している. これまでの土壌分析は,主として地質学的な分析が行われ,その手法は概ねは確立されているが,生物体やそれらが生成した有機物質(腐植を含む)やDNAを分析対象としてはおらず,その土壌がもつ特徴的な情報を利用しきれていない.そこで本研究では,従来の地質学的な視点に,化学的・生物学的視点を加え,土壌の持つ特徴を明らかにし,ひいては土壌の分析からその土地利用・植生等を推定することを目的とする. 当研究所において試料採取していた様々な地質的背景をもつ10種の土壌を試料とし,熱分解(シングルショット)分析を実施したところ,10種の土壌で明確に異なるパイログラムが得られた. 農地および植物が繁茂する雑種地では多数の熱分解物質のピークが認められた一方で,それ以外の土壌ではピーク数も少なく,ピーク面積も農地等の土壌と比較して明らかに小さかった. 得られたパイログラム上の各ピークの質量スペクトルのデータベース検索により,各ピークの帰属を試みたところ,どの土壌からもトルエン,フラン,キシレン等の芳香族系熱分解物が得られた. さらに,熱分解物に占める含窒素化合物(ピロール系,ピリジン系化合物等)のピークは農地由来の土壌で高く,農地以外では低い傾向が認められた. 農業分野において土地の肥沃度の目安となる炭素含有量およびC/N比を求めるために広く用いられているCHN元素分析を行ったところ,農地および雑種地では8~10%程度の炭素含有率を示す一方で,それ以外の土壌では0.5~2.5%程度であった.C/N比は農地で低い値を示した. 熱分解GC-MSの結果,様々な由来の土壌から明らかに異なるパイログラムが得られ,総ピーク面積および含窒素化合物のピーク面積から土壌がもつ有機化合物の質および量が測定可能となり,土地利用の推定に有効であると考えられた.これらの結果は農業分野で広く用いられている元素分析の結果を概ね合致した. 同一圃場において7種の異なる作物の根元付近から採取した7種の土壌から植物DNAを抽出し,rbcL領域のPCR増幅を行ったところ,植物DNAの増幅産物(約 300 bp) が得られた.引き続き抽出したDNAの次世代シーケンサを用いたメタゲノム解析を実施している.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390579078735095808
  • DOI
    10.14866/ajg.2023a.0_58
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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