被爆女学生の戦後 ―林京子「空罐」論―

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林京子の短篇連作『ギヤマン ビードロ』は、長崎高等女学校在学中に被爆した林の体験を基に、原爆の記憶と被爆女学生たちの戦後を描いて、一九七八年度芸術選奨新人賞内示を得た。近年、その第一作「空罐」を中心に、作品における原爆の記憶のあり方とその継承の可能性が議論されることが多いが、本論は「空罐」について、被爆体験をいかに語るかという作者の問題意識の下、被爆女学生の戦後という設定において、戦後三十余年を経た被爆者の存在の意味を追求した作品と見立て、再評価を試みたい。特に視点人物兼語り手「私」とその周辺の主要登場人物が在学し卒業した高等女学校という場について、ジェンダーの観点から考察し、そこにおけるコミュニタスの機能と相まって、これがいかなる被爆者の意義を浮上させるかを分析し、「空罐」の達成を確認したい。

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