スーチャレス生体弁を用いた大動脈弁置換術と同時に施行した僧帽弁置換術中に生じた左室破裂の1例

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Left Ventricular Rupture Following Sutureless Aortic Valve Replacement and Mitral Valve Replacement:A Case Report

この論文をさがす

抄録

<p> 症例は78歳,女性.大動脈弁狭窄症および高度の僧帽弁輪石灰化を伴う僧帽弁狭窄症に対する二弁置換の手術適応とされ当科へ紹介となった.高齢で複合手術であることから,手術の低侵襲化を目的に,スーチャレス生体弁を使用する方針とした.僧帽弁輪の高度石灰化病変を可及的に除去した後,機械弁による僧帽弁置換術を施行した.続いてスーチャレス生体弁を用いて大動脈弁置換術を施行した.大動脈遮断解除後に房室間溝左心室側からの出血を認めたため左室破裂を疑った.再度心停止とした後,僧帽弁位機械弁を取り外し出血源を検索すると,僧帽弁後尖弁輪部に穿孔部を認めた.左室破裂と診断し,ウシ心嚢膜パッチで穿孔部を覆うように弁輪部を修復した後,再度僧帽弁位へ機械弁を縫着した.最後に大動脈切開縫合部を再切開し,スーチャレス生体弁の位置ずれ(migration)がないことを確認し終了した.</p><p> スーチャレス生体弁は留置手技が簡略化される一方,留置後の弁周囲逆流,房室ブロック,migrationなどの問題がたびたび報告されている.これを回避するため,本例のような左室破裂の修復にあたっては良好な視野の確保ならびに愛護的な操作に努めることが重要であると考えられた.</p><p> 今回スーチャレス生体弁を用いた大動脈弁置換術と同時に施行した僧帽弁置換術中に生じた左室破裂の1例を救命した.</p>

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 54 (10), 1179-1183, 2022-10-15

    公益財団法人 日本心臓財団

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ