What's the Reasonable Use of Money? : Learning from Commonsian Institutional Theory of Money

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  • 貨幣の適正な在り方とは何か : コモンズ派貨幣制度説に学ぶ
  • カヘイ ノ テキセイ ナ アリカタ トワ ナニ カ : コモンズハ カヘイ セイドセツ ニ マナブ

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Abstract

本稿では,アグリエッタ=ヴァッラ『貨幣の将来』(2021年)第1章の議論を中心に,「貨幣の適正な在り方」を考えるための材料を摂取しようとした。レギュラシオン派の貨幣論は,貨幣の「機能」ではなく貨幣の「目的」「使用」を語り,政治主権に従属した組織化を研究対象とする点で,コモンズ『制度経済学』1927-29年草稿と共通であり,「コモンズ派貨幣制度説」と呼んでよい(以上I)。アグリエッタらは,貨幣の目的を,社会の3つの多次元的目的(保障・公正・成長)の実現度合いに示される「社会的凝集性」に求める。この目的のための社会的手段である統合的計算単位と最終的支払手段を提供する貨幣制度(支払システムという公共財)が安定的に維持されている状態をもって,「貨幣の適正な在り方」の基準とすることができる(以上II)。資本主義社会における貨幣は,計算単位・支払手段であるだけでなく価値準備(流動性)でもある。貨幣=流動性が含意する「貨幣の両義性」によって生み出される金融市場のモメンタムさらには金融的循環というリスクから支払システムを守ることもまた,「貨幣の適正な在り方」には含まれる。そこで,支払システムの諸ルールの遵守に関する3つの信頼(方法的,ヒエラルキー的,倫理的)を安定させるための,通貨当局(中央銀行,国家)の介入が求められる。この構図の中で,多次元的な諸目的がその都度の政治的な裁定を伴いながら追求されていき,その絶えざる調整のプロセスが「社会的凝集性」をもたらすことになるが,この点の究明は今後の課題である(以上III)。

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