日常生活を清潔に快適に楽しむ衣服

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抄録

人は衣服と行動を共にしていることから、着心地の悪い衣服を長時間着用していると、衣服が心身の疲労の原因となることがある。自分の意思で身体を動かすことができない場合の衣服選びは、特に慎重に行う必要がある。衣服に求める機能は、素材が皮膚を刺激せず安全であり、皮膚に触れた時に安らぎ感を持つこと、衣服が身体を圧迫しないこと、無理なく着脱ができること、体温調節を補助し温熱的快適性を維持できること、ならびに、着用者の品格を保ち、着用者に似合う美しい衣服であること、心身の健康を維持できること、さらに、洗濯等の取り扱いやすさなどを挙げることができる。 重症心身障害児(者)のファッションショーは今年度で6回目となる。このファッションショーでは、モデルの日常生活状況や身体的な特徴を把握し、適合する衣服素材を厳選し、着脱時の工夫を行ない、着用者には、「心身共にほっとする」「楽しさやワクワク感がある」着心地の良い衣服を提供し、介護者には、家族としての思いを衣服に託すことができ、介護の際の諸問題を解決できるような衣服の提案を目的としている。 2011年度のファッションショーは、徳島赤十字ひのみね総合療育センターの協力により、家族の了解を得た7歳、18歳、30歳の女性2名と男性1名の計3名をモデルとし、彼らの日常生活のQOL向上を目指した衣服の提案を行う。男性用の衣服素材には、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士の極限環境の生活用に開発した清潔さを長期間維持し、高い消臭・抗菌性能を持つ新しい綿素材を使用した。女性用の衣服は、モデルの希望を取り入れ、ピアノを演奏する時に着るドレスを作製した。これらの衣服は、耐洗濯性にも優れ、日常の取り扱いも容易であることから、着用者と介護者の日常生活のQOL向上にも役立ち、清潔さを維持し、快適で楽しい毎日を過ごす衣服として活用いただけることを願っている。 略歴 開発した宇宙船内服は、2008年~2010年のスペースシャトルミッションにおいて、宇宙飛行士の生活を快適にした。その成果を地上の介護・福祉分野に展開し、宇宙と福祉の研究活動を行なっている。1977年お茶の水女子大学大学院家政学研究科修了。博士(生活工学)。日本大学、田中千代学園短期大学を経て、1996年より日本女子大学教授。日本繊維機械学会学会賞受賞。宇宙開発委員会推進部会特別委員、日本重症心身障害学会評議員など。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390579698521992448
  • DOI
    10.24635/jsmid.36.2_267
  • ISSN
    24337307
    13431439
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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