A22 過緊張の抑制を目的とした超音波療法の試み

DOI
  • 小笠原 徹
    愛知県青い鳥医療福祉センター リハビリテーション部
  • 堀場 寿実
    愛知県青い鳥医療福祉センター リハビリテーション部
  • 岡川 敏郎
    愛知県青い鳥医療福祉センター リハビリテーション科

抄録

はじめに 超音波療法(Ultrasound Therapy 以下、US)には温熱と音圧作用があり、疼痛の軽減や筋スパズムの減弱に効果があるとされている。当センターではUSにより過緊張が軽減し保持椅子に座れるようになった例を経験した。今回、頸部と肩周囲が過緊張状態の重症心身障害児に対し気管切開術時の術野を確保する目的でUSを試行したので報告する。 対象 当センターに通院する神経変性疾患の10歳女児。頸左回旋、W肢位、左Windswept変形、S字状側弯を呈する。触刺激に過敏があり両肩をすぼめて緊張する。誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しているが平常時の経皮的酸素飽和度はおおむね95%である。また今回の試みに関して母親に説明し了解を得ている。 方法 超音波治療器(伊藤超短波製US-730 ®)を使用し、1.9W/cm2の強度、50%間歇で筋線維方向に沿って照射した。部位は両側の僧帽筋上部線維と胸鎖乳突筋、舌骨上筋群とし各5分ずつ行った。評価は両側の鎖骨頭と一側の肩峰からなる傾斜角、両肩峰間の距離、呼吸数と一回換気量(IMI製ハロースケール®)としUS前後に1回ずつ行った。またvisual analog scale(以下、VAS)を10cmの直線で最大の緊張状態を10として、母親にUS前後の緊張状態を評価してもらった。 結果 US後、姿勢は両肩が下がり頸右回旋となった。傾斜角は右121度が141度、左は140度が145度と下制した。両肩峰間の距離はUS前を1としてUS後は1.08となった。呼吸数は22回から20回になり、一回換気量は202mlから168mlと減少した。VASはUS前が0から4.2cm、US後は2.1cmと半減した。 考察 肩が除重力位で下制したことと頸部の右回旋が得られたこと、緊張が和らいだと母親が感じていることから、US前の頸部周囲の過緊張が抑制され筋が弛緩したと考える。呼吸はUSで安楽になったとはいえなかった。今回、USの試みで姿勢の変化から過緊張の抑制効果がみられ、手術に臨むことができた。今後の課題は抑制効果の持続性検証と考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390579698522000000
  • DOI
    10.24635/jsmid.36.2_278_2
  • ISSN
    24337307
    13431439
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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