北海道におけるアメリカカクスイトビケラとクワヤマカクスイトビケラの生活史

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  • Life histories of Brachycentrus americanus (Banks, 1899) and B. kuwayamai Wiggins et al., 1985 (Trichoptera, Brachycentridae) in Hokkaido, northern Japan

抄録

2018-2019年に北海道に分布するカクスイトビケラ属の2種, アメリカカクスイトビケラBrachycentrus americanus (Banks, 1899) とクワヤマカクスイトビケラB. kuwayamai Wiggins et al., 1985 の生活史を調べた. アメリカカクスイトビケラは恵庭市の住宅地を流れる湧水流・茂漁川幸橋 (42.8851N, 141.5596E, 標高35 m) で, クワヤマカクスイトビケラは安平町の道有林に発する安平川無名橋 (42.8746N, 141.9098E, 標高120 m) で, それぞれ調査を行なった. 頭幅分布から 2種とも幼虫は5つの齢期をもつと判明した. 1-5齢幼虫と蛹の相対出現頻度と幼虫体重の季節変化からアメリカカクスイトビケラは1年1世代で, 5月末から11月初めまで長い成虫出現期をもつことが明らかになった. また, 初齢幼虫が7月と12月の2回みられること及び齢組成に2つの山のある月が多いことから, 発育周期の異なる2つのコホートが含まれているものと推察された. 一方, クワヤマカクスイトビケラの成虫の出現期は5月末から6月中旬までの約1ヶ月間と短く, 幼虫は7月の2齢から11月-翌年1月の5齢まで各月の幼虫の齢はほぼそろっていた. クワヤマカクスイトビケラでは4齢幼虫の約80%, 5齢幼虫の約95%が筒巣に多数の長い植物片を付着させていた. アメリカカクスイトビケラの3-5齢幼虫も1%以下の個体に筒巣への植物片の付着がみられたが, ほとんどの幼虫は植物片を付着させておらず, 付着片の数も1-4本と少なかった. 5齢幼虫の主な消化管内容物は, アメリカカクスイトビケラでは水生植物片 (約50%) と陸上植物片 (約30%), クワヤマカクスイトビケラでは不定形のデトリタス (約50%) と陸上植物片 (約25%) だった. 動物質を食べている幼虫の割合は齢発達とともに増加し, 2種とも5齢幼虫では約50%だった.

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