教員養成系学部1年生が保持する心肺蘇生にかかわる素朴概念の事例

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  • もう一度!「保健」で心肺蘇生・AED教育をしっかりと!!

抄録

<p>素朴概念とは、子どもたちが学校教育において学習する前に身に着けている知識で、通常の大人や科学の立場からみれば正しくないとみなされる概念を指して命名された。教育心理学や認知心理学、理科教育学の分野においては、前概念(preconception)、代替概念(alternative conception)、現象学的原理(phenomenological conception)、ル・バーなどが使用されており、その呼び方は20種類以上にも達する。ヴィゴツキーの「生活的概念」にも近く、近年では保健科教育の分野でも研究がされはじめている。</p><p> 素朴概念の存在は、子どもの科学的認識形成の中核的概念といわれ、診断的評価の対象となる。そこで得られた診断的評価の情報をもとに、発問や探究課題が工夫されたり、「つまずき」が組み込まれたりして授業は構成される。 森昭三も、保健の授業・教材づくり研究を進める上で「対象とする子どもを把握する」重要性を挙げ、「教科の内容は、子どもの発達に即して体系づけられると同時に、逆にその内容の体系が子どもの発達を促進していくものでなければならない。つまり、ここではヴィゴツキーのいう『発達の最近接領域』が問題とされる」(体育科教育,1975)と主張し、「生活的概念」と「科学的概念」の複雑な相互作用を生じさせる「発達の最近接領域」の研究の必要性について言及している。</p><p> 本研究では、全ての保健学習事項が修了した国立大学法人の教員養成系学部1年生を対象に、研究利用に同意が得られた198名の回答を分析した。その結果、胸骨圧迫の位置は66%、心臓の位置は31%、AEDの理解は22%の正答率であった。保健科では、子どもたちが保持する素朴概念を考慮した上での心肺蘇生やAED指導法の検討とともに、教員研修や教員養成課程では素朴概念の存在を理解した教科教育法の工夫と改善が求められる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390579830883451136
  • DOI
    10.20693/jspehssconf.73.0_565
  • ISSN
    24367257
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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