“Equity”と“Equality”

DOI
  • 懸橋 理枝
    大阪産業技術研究所 コロイドおよび界面化学部会副部会長 DEIR委員長

抄録

<p>昨年度、部会の新たな委員会としてDEIR(Diversity, Equity, Inclusion and Respect)委員会が発足し、その委員長を拝命して以降、様々な場面で、部会におけるDEIR委員会の意義などを述べさせていただいています。DEIR委員会のミッションの一つは、ジェンダーの問題はもちろんですが、外国籍の部会員などにも部会員としてのメリットを十分享受してもらえるよう、部会に変化や改善を提案することです。そのため、他の委員会に比べて若手の女性委員の比率が高く、外国籍の研究者が複数参加しているのもDEIR委員会の特徴と言えます。また、他学会でダイバーシティや男女共同参画の委員会で活躍されている委員や、海外企業でダイバーシティに関するトレーニングを受けた経験がある委員にも参加していただき、様々な課題に対して積極的な意見交換を行っています。</p><p>ここでは、DEIR委員会の名称に含まれている4つのワード、即ち“diversity”、“equity”、“inclusion”、“respect”のうちの、“equity”について述べたいと思います。というのも、最近、この言葉が実は最も理解するのが難しい(理解が足りない)と感じる場面がいくつかあったためです。“equity”とよく似た言葉に“equality”があります。equalityは「平等」、“equity”は「公平性」と訳されることが多いように思いますが、両者の違いを示すのに、次のようなイラストがしばしば用いられます。左側の“equality”では、全員に同じ高さの台が準備されており、「与えられる条件はみな同じで平等」です。しかし、これだと一番右の子供は野球を見ることができません。一方、右側の“equity”では、それぞれの背の高さ(状況)に合わせた台が準備されていて、全員が野球を見ることができます。つまり、「個々の特性や状況を考慮し、誰にでも公平な機会を提供する」のが“equity”と考えられます。</p><p>当部会において、この“equity”を考慮した例の一つとして、直近では、科学奨励賞および技術奨励賞のライフイベントによる年齢制限緩和があります。これは、DEIR委員会から部会へ提案したものです。DEIR委員会で緩和措置の内容について検討を重ね、賞選考委員会とも議論して部会への提案を経て決定したものが、部会ウェブサイトで公開されています。以下に、その内容を紹介します。</p><p>1)年齢制限を緩和するにあたり、休業等(休暇、休職、離職を含む)の期間は自主申告で、煩雑な書類の提出は求めない。ただし、選考委員会が証憑を求める場合がある。</p><p>2)出産・育児、介護などのライフイベントによる休業等(休暇、休職、離職を含む)に伴う研究活動の中断期間がある場合</p><p> 2-1)産前・産後の休暇を取得した場合、あるいは合計3か月以上の育児休業を取得した場合は、性別を問わず1回の出産につき、応募年齢の上限を2年まで緩和する。</p><p> 2-2)介護休業を取得した場合は、その通算期間分、年齢制限の緩和を認める。</p><p> 2-3)病気や災害など、やむを得ない事情で研究期間の中断がある場合は、中断期間と理由を明記する。</p><p>3)緩和の上限は5年とする。</p><p>例えば、出産・育児により、研究に集中するのが難しい時期が一定期間(年単位で)続くのはご存知の通りで、どんなに手厚い家族や周囲のサポートがあったとしても、出産・育児がなかった場合と同じにはなりません。介護や災害などによる研究の中断も、ご本人の努力だけではいかんともしがたい場合が多く、誰にでも起こり得ることでもあります。</p><p>DEIR委員会では、個々の状況を考慮し、奨励賞に応募するための「公平な機会を提供」するべく、今回の年齢制限緩和を提案しました。今年度は、ライフイベントに伴う年齢制限の緩和が主となりましたが、外国籍の部会員が奨励賞の応募に際して不利にならないような緩和措置も検討するべきとのご指摘もいただいており、私自身も確かにその通りであると考えます。部会員誰もが公平な機会を享受できる環境を整備するため、来年度以降も検討を続けたいと考えています。また、奨励賞以外でも改善するべき点についてお気づきのことがありましたら、是非DEIR委員会にお知らせください。よりよい部会にしていくため、部会員の皆様のご理解とご協力を、どうぞよろしくお願い致します。</p>

収録刊行物

  • Colloid & Interface Communications

    Colloid & Interface Communications 48 (4), 1-2, 2023-12-10

    公益社団法人 日本化学会 コロイドおよび界面化学部会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390579908258419712
  • DOI
    10.57534/cicommun.48.4_1
  • ISSN
    27585379
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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